このコラムがアップされる頃、インターネット上では英語版Wikipediaをはじめ、いくつかのWebサイトが抗議のために閉じたり、抗議リンクを貼ったりしているはずである(関連記事)。

Wikipediaのトップページ。すでに閉鎖されている
Wikipediaのトップページ。すでに閉鎖されている
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 抗議の対象は、SOPA(Stop Online Piracy Act)とPIPA(Protect Intellectual Property Act)。いずれも、オンライン海賊行為や著作権侵害の防止法案である。SOPAもRIPAも現在、それぞれアメリカ議会の下院と上院で審議がされており、近く投票が行われることになっている。

 海賊行為や著作権侵害は悪いことだから、それを防止する法案があってもよかろうと思われるだろう。だが、これは長いこと続いている「シリコンバレー対ハリウッド」の対立の構図を表したもので、両者の間にはなかなか合意点が見つからない。

 これらの法案は、国外のサイトが、こうした海賊行為を行っている場合、アメリカからはアクセスできないようにし、さらにこうしたサイト向けにクレジットカードが使えなくなったり、アメリカ企業が広告を出したりするのを禁止しようというもの。法案支持派は、こうした違法行為をする国外のサイトのせいで、国内の雇用が影響を受けているとまで言っている。

 オンラインの著作権侵害については、すでにデジタル・ミレニウム法(DMCA)があるが、これは国外のサイトにまでは及ばない。国外に拠点を置いて違法で動画や音楽のファイルのダウンロードなどを可能にしているサイトの存在に業を煮やしたハリウッドの映画会社、レコード会社などが「では、この手で」と今回の法案に力を入れているのである。

 一方、法案反対派は、こうした保護法はいずれ拡大解釈されると主張する。国外と言いながら、アメリカのサイトにまで影響を及ぼし、行き着くところは検閲行為となって言論の自由を阻み、インターネットの発展を減速させるというのだ。法に触れることを怖れるさまざまなサイトが自粛し、自己検閲に乗り出すことも危惧される。面白い表現活動の場となっているインターネットが監視の対象になり、すっかりしぼんでしまうというわけだ。法案の表現があいまいで、いかようにも解釈されそうだというのも、彼らの論点だ。

 Wikipediaは、1月18日午前零時から24時間にわたってサイトを閉鎖し、グーグルも抗議文を掲載する。フェイスブックも反対派で、その他にも約7000サイトが何らかの抗議運動に出るという。これは、インターネット始まって以来の最大の集団抗議行動だ。

グーグルのトップページに貼られたリンク先の抗議文。法案がインターネットの検閲になると警告している
グーグルのトップページに貼られたリンク先の抗議文。法案がインターネットの検閲になると警告している
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