世間ではTPP(環太平洋経済連携協定)の議論が沸騰中だが、既に私たち繊維業界では生産拠点の海外移転と産業空洞化が極限まで進んでいる。もはや日本の「衣料品自給率」は5%を切る。

 そこで、私も発起人の一人となり、「日本発ものづくり提言プロジェクト」を結成。このままでは日本でものづくりができなくなってしまう──と、意見広告などで警鐘を鳴らしてきた。中国での人件費高騰も進む今、コストと品質の両面で、日本のものづくりの再評価を訴えている。

 しかし、アパレル業界の反応は寂しい限りだ。そこでエンドユーザーに直接訴えるイベントとIT活用が必要と考え、「ものづくりシンポジウム」を10月22日に開催した。私たちが挑戦した、お金を掛けないIT活用法を紹介しよう。

Web代わりにCANPANブログ開設

 プロジェクトは有志によるボランティア運営のため、Webサイトを作る資金がなかった。そこで日本財団が運営する公益コミュニティサイトCANPANの無料ブログを活用。プロジェクト事務局の吉川新吾さんは繊研新聞社の記者なので、写真や文章はお手のもの。ブログ操作を独習して、私たちのメッセージや活動について更新を続けた。
http://bit.ly/h6IucT

イベント用にFacebookページ

 こんな時、今流行のFacebookを使わない手はない。「いいね!」が集まれば、独自ドメインも取れる。

 早速「日本発ものづくり提言プロジェクト」の名称でFacebookページを開設し、スタッフが書き込める掲示板を作成。ここに、イベントの予告や工場見学の報告などを貼り付けていった。また、イベント告知機能を利用して参加者を募集し、出欠を取った。
http://on.fb.me/n5QmeK

工場見学のYouTube動画を制作

 ものづくりの感動は生産現場と職人の熱いメッセージなくしては伝わらない。そこで小高莫大小工業の小高集社長らと、カイハラのデニム生地工場、エドウインのジーンズ工場を見学した。そして、匠たちのインタビューを収録。その動画をシンポジウムの冒頭で流して生産現場の思いを体感してもらい、また YouTubeでも公開した。
http://bit.ly/tN6Gyc

見学記をブログやTwitterで紹介

 工場を見学した3人は、個人ブログやTwitter(アカウントは@nobukume、@tsudoi、@kokoto122)で見学記を公開した。感動をそれぞれ自分の言葉で語れば、メッセージに幅と奥行きが出る。ブログ記事へのリンクをプロジェクトのFacebookページに設けることで、情報発信を効率化しつつ、シンポジウムへの集客につなげた。
http://amba.to/ryXtN6

動画×ソーシャルメディアで告知

 シンポジウムに足を運んでもらうには、開催概要を文字にしたWebサイトやメールマガジンで告知するだけでは不十分だ。そこで、当日流す10分の工場見学動画を1分にまとめた予告編を制作。YouTubeで先行公開した。動画へのリンクをTwitterやFacebookで告知し、簡単かつ効果的な集客ツールとした。
http://bit.ly/ozBhUM

冒頭プレゼンは高橋メソッドで

 若者向けのシンポジウムなので、冒頭で心をつかむには、なるべく短く分かりやすいプレゼンにすることが鉄則だ。そこで、どでかい文字と、短く印象的なフレーズを紙芝居のように提示する「高橋メソッド」で、PowerPointの資料を作った。そして、参加者がシンポジウム終了後にどんな自分になっているかを印象づけた。
http://bit.ly/pYRdDU

Ustreamで生放送×録画配信

 当日の様子はもちろん、Ustreamを使って生放送し、終了後は即座に録画したものを公開した。会場は満席で熱気むんむんだったが、それでも200人しか見てもらえない。その場限りの感動で終わらせず、永久保存するのだ。これからも事あるごとに、貴重な録画をソーシャルメディアで紹介したい。一粒で何度もおいしいイベント活用だ。
http://bit.ly/rI5QCk