テクノロジー界は、第2のバブルを迎えているというが、同時に起こっているのがパテント(特許)バブルである。最近はもう、方々の会社がパテント侵害の訴えを起こしてばかりで、業界入り乱れてわけが分からなくなるほどだ。しかも、そのほとんどがスマートフォン、タブレット関連である。

 昨年から持ち上がっていたのは、アップルが台湾のデバイスメーカー、HTCを訴えるという騒ぎだ。HTCはAndroid OSでスマートフォンを発表した最初の会社。アップルがHTCを訴えるのは、いわば対グーグルの代理戦争のようなものと理解されている。

 Android OSのスマートフォンの市場シェアはすでにiPhoneを超え、40%以上に達している。アップルとしてはどうしてもその勢いを削ぎたいところだ。Androidは、オープンソフトなので、とりあえずはデバイスメーカーを責めようというところらしい。

 そのHTCは、スマートフォンが1台売れるごとにマイクロソフトに5ドルを支払っているという数字が、最近明らかにされた。マイクロソフトが、Windows携帯のパテントを侵害しているとHTCに圧力をかけた結果、パテントライセンス契約として合意したかたちになっているのだ。マイクロソフトは、Android OSを利用する他のデバイスメーカーにも、同様の方法で挑んでいる模様だ。

 アップルは、ノキアにパテント侵害で訴えられたのを、さらに訴え返し、その後ノキアがまた訴えるという信じられない顛末になったが、結局アップルが負けてノキアに罰金とライセンス料を支払っている。

 訴訟好きのアップルは、サムスンも訴えている(参考記事)。それも何度もだ。Galaxyシリーズスマートフォンとタブレットのインタフェースが、iPhoneやiPadのひどいパクリだという内容。サムスンは、これまでアップルに半導体を提供してきた。だが、うわさではアップルは現在、他に供給先を求めているという。サムスンと縁を切るつもりだろう。

 先だって大ニュースになったのは、破産したカナダの通信会社ノーテルの通信技術関連パテント約6000件を、マイクロソフトとアップル、RIM(BlackBerryのメーカーであるリサーチ・イン・モーション)、ソニーなど6社からなるコンソーシアムが、45億ドルで競り落としたという話。競りは9億ドルから始まったとのことで、一気に5倍に跳ね上がったわけだ。

 この競りで負けたグーグルはその後、コンピューターアーキテクチャーなども含めた、かなり多様なIBMの技術関連パテントを1000件買い取っている。ただ、ノーテルのパテントは、またもやAndroidメーカーに足かせをかける可能性が高く、Androidの成長を阻止する色合いが高いという。これから「Android対その他」の攻防がますます激化しそうだ。

 グーグルの法務担当者は、「これまでマイクロソフトとアップルは仲が悪かったはずなのに、ノーテルのパテント買収では同じベッドで寝てしまった。今頃、何でこんなことになったのかと困惑しているだろう」などと、Twitterで皮肉を言って、関係者の反撃を受けているところだ。

 アメリカのパテント制度には、批判者も多い。本来、技術革新を推進することが目的であるはずなのに、足を引っ張るようなこうした争いを起こす目的に悪用されているというのだ。それに、パテントの記述は素人には分かりにくく、侵害の訴えが正当なものなのかどうかさえ見分けがつかない。

 それでもパテントは、今のところ業界の「通貨」のようなものである。この騒ぎはしばらく収まりそうにない。