福島第一原子力発電所の事故を受ける形で、7月1日より電力使用制限令が発動した。政府は、契約電力500kW以上の大口需要家に対して、昨年比マイナス15%の節電を要求することとなった。

 この電力使用制限令、電気事業法第二十七条に基づく政令、つまり大臣が出す強制力を持つ命令である。

電気事業法
第二十七条(電気の使用制限等)  経済産業大臣は、電気の需給の調整を行わなければ電気の供給の不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし、公共の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、その事態を克服するため必要な限度において、政令で定めるところにより、使用電力量の限度、使用最大電力の限度、用途若しくは使用を停止すべき日時を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者の供給する電気の使用を制限し、又は受電電力の容量の限度を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者からの受電を制限することができる。

 電力使用制限令の発動は1974年のオイルショックの時以来だという。この時は需要ピークの抑制を狙ったものでなく、火力発電所が使う石油を節約することが目的だった。当時私は中学1年生だったが、午後11時を過ぎると早々にNHKのテレビ放送が終了したのを覚えている。

 今回は、単に電力不足を補うだけではなく、日中の午後の電力需要のピークを緩和する必要がある。電力需要が発送電システムの供給能力を上回ってしまうと、大規模停電が発生するからだ。従って、節電策も1日の電力消費量を減らすだけでなく、どのようにしてピークを分散させるかを考慮しなくてはならない。

 手っ取り早いのはサマータイムだとばかりに、早朝出勤を決める会社が増えている。実際、首都圏では早朝5時台、6時台の電車は今までになく混雑している。まるで朝の通勤ラッシュがそのまま早朝にシフトしたかのようだ。

 が、ちょっと待って欲しい。6月21日に独立行政法人・産業技術総合研究所は、サマータイムは電力需要ピークの低減に効果なしとする研究結果を発表した

 それなのになぜ、多くの会社は早朝出勤を奨励するのだろうか。