前回はオンラインストレージを使う場合の業者選びについて注意することを書きました。

 今回の大震災時に、自分の家やオフィスだけでバックアップを取っていると、バックアップを含めて全てのデータを失ってしまう可能性があります。従って、自分の家やオフィス以外の場所でバックアップを取ることは、本当に万が一の場合を考えると必要な処置でしょう。

 これまでは、自分を襲う災害はいつかは来ると思っていても、その備えをしようという人は少なかったと思いますが、この大震災の影響からかさまざまな備えを考える機運が高まったようです。実際、防災グッズなどはとても売れているようです。同様にバックアップについても関心が高まっているものと思います。

 私も試しにある業者のオンラインバックアップサービスを試てみました。よくある無料サービスでは、特定のフォルダーにファイルを保存すると自動的にバックアップを取ってくれるものが多いのですが、有料のサービスでは拡張子やディレクトリなどを自由に指定できるものがあります。

 今回、試してみたのは、容量無制限で年額が約8000円のサービスです。データセンターは海外にあるようですが、データは暗号化してあるとのことですから、万が一、情報が漏洩しても大丈夫と思われます。ただし、実際にどのような暗号化と鍵の管理をしているかについては情報が公開されていません。

 開発環境を含めると8TB程度のデータがありますが、いきなり大事なデータをすべて試すわけにはいかないので、まずは、漏洩しても問題ない80GBほどのデータを対象にしてみました。

 オンラインですから、ある程度の時間がかかることは予想していましたが、バックアップソフトウエア自体の動作は決して軽快なものではなく、バックアップ対象の設定にもかなり時間がかかってしまいました。

 そして気になるバックアップの所要時間ですが、最初は6日と表示されていましたが、実際にコンピューターを使用しながら、かつ、節電のためにこまめに電源を切るような使い方をしたので、1週間経過した現在で80%ほど終了しています。実際に使うとなるとこの程度の容量が現実的なのかもしれません。

 最近は外付けハードディスクの価格が2TBで1万円を切るものも少なくないので、1TBを超えるデータのバックアップを取りたい方も少なくないと思います。でも、そのような大容量はオンラインバックアップは現実的ではないのかもしれません。大容量のデータを扱っている人は、日常的にそれなりの大きさのファイルを扱っているので、そのバックアップをオンラインで行うのは、パソコンを24時間電源入れておかないといけなくなるでしょう。そのことで節電にもならずパソコンの寿命も短くしては、なんのためのバックアップか分からなくなります。

 とはいえ、やはり大事なデータが消えては困る人も多いと思いますから、自分で大事なデータはディレクトリ単位で圧縮をして、それを無料サービスでバックアップする方法もありますし、昔ながらではありますが無料メールサービスに添付ファイルとして送りつけておくことも考えられます。

 ただし、暗号化は決して忘れてはいけません。また、そのパスワードがメールが何らかの方法で盗まれた場合に分かるようになっていてもいけません。暗号方式にも気を使うべきで、AESなどの強力な方式を使う必要があります。よく用いられるZIPなどの圧縮で使われる暗号化方式は決して安全とは言えず、互換性を重視した古い暗号化方式です。

 バックアップはデータを守るために必要な措置ですが、そのことで膨大なデータが流出してしまってはいけません。速度や容量、予算、そして自分の技術的な力量なども考慮して、いろいろと自分で試してみて使いやすいものを探してみる努力が必要です。