東日本大震災によって、BCP(business continuity plan)のあり方について見直す企業が増えています。同様に個人でもパソコンに保存されているデータのバックアップについて関心が高まっています。

 これまでのバックアップの考え方は、外付けのUSB接続型のハードディスク、あるいはLANでハードディスクを共有できるNAS(network attached storage)などを利用することが一般的でしょう。しかし、震災などの自然災害を前提とするときには、それでは不十分であることが考えられます。

 例えば、建物自体に大きな損傷があったケースを考えると、パソコンとバックアップ媒体が同じ場所にあるということは、パソコンだけでなくバックアップデータを保存している装置や媒体も被害に遭ってしまって使用不能/復旧不能になるリスクがあることを意味します。

 また、計画停電が長期化する中、自宅作業も視野に入れた勤務形態を考えざるを得ない企業も多いことでしょう。自宅作業のために、無防備なUSBメモリーでデータの持ち帰りなどが行われてしまうことも考えられます。

 実際、私にとっても、開発したプログラムのソースコードなどをどのように確実に保存するかがテーマです。

 こうした点を解消可能な手段の一つがオンラインストレージサービスです。Dropboxなどのクラウド型のオンラインストレージサービスをすでに活用している個人ユーザーは多いと思いますが、今後はBCPを視野に入れ企業がオンラインストレージなどのクラウドサービスを活用するケースが増えるのではないでしょうか。

 クラウドサービスを利用する時には注意点があります。

 例えば、その業者が信用できるかというシンプルな問題があります。以前、私が友人にサイズの大きな画像ファイルを送ろうとして、クラウドのファイル転送サービスを利用しようとしたときのことです。いろいろなサービスがある中で検索エンジンで適当に探した無料サービスを使ってファイルを友人に転送しました。すると、受け取り通知のメールは私に届いたのですが、いっこうに友人には届きません。問い合わせをしてもなしのつぶてで結局届きませんでした。会社の所在地は米国でした。

 ここでの問題は届かなかったことではなく、アップロードしたファイルの行方です。今回送ったファイルは他愛もない個人的なものだったので誰にも迷惑をかけることはありませんでしたが、もしこれが取引先に送るものだったら大変な情報漏洩事件になるところです。

 クラウドサービスには無料のものが多数あります。むしろ有料のものが珍しいと言ってもいいでしょう。特に個人的にクラウドサービスを利用するときには、基本的には無料のサービスを探して使うでしょう。

 しかし、ちょっと検索エンジンで検索すると分かることですが、オンラインストレージのサービスだけでもとてもたくさんのサービスがあり、どれを選んでいいか迷うことでしょう。

 当面は有名なサービスを使うのが無難でしょう。もしあまり聞いたことのない業者を使うなら、無難なデータで「お試し」を行い、ちゃんと動作するかという基本的な確認を自己責任で行う必要があります。それらしいサービスがあるからといって信用してはいけません。

 また、海外にある会社も注意が必要です。先にも挙げたような問題がある場合に、問い合わせが不便だからです。また、日本の国内法も適用されませんから、基本的には「泣き寝入り」するしかないのです。例え日本にある事業者と言えども信用に足る業者ばかりではないのが実情ですから、リスクを確認して許容することがクラウドサービスを利用する基本的な考え方です。

 自分のデータをバックアップするようなオンラインストレージサービスを利用する際には、まず業者選びが重要なポイントとなりますので、慎重に見極めてください。バックアップのつもりが情報漏洩につながったり、肝心な時にバックアップが取られていなかったりということのないように十分な検証も自己責任で行うことが肝心です。