現在、私の会社では顧客企業の重要な情報をデータセンターの専用サーバーで預かっています。仮想サーバーではなく、物理的に他のサーバーから独立したサーバーマシンです。しかし、回線やハードウエアの冗長構成やデータのバックアップ、そして将来の拡張性などを考慮するとクラウドサービスで仮想サーバーを借りた方がコスト面で有利であると考えて、クラウド事業者を選定することになりました。
複数台のサーバーマシンや複数の回線を使って冗長構成を組むとなると、それなりの設備投資が必要になりますし、将来回線容量やサーバーの台数などを拡張するときには、それに併せてファイアウオールや負荷分散装置(ロードバランサー)を買い換えなければいけません。
仮想サーバーを提供しているクラウド事業者なら、仮想サーバーを動作させるサーバーマシンと回線が2重化されているはずなので、一般的に回線料金も含まれている仮想サーバーを借りれば、それだけでハードウエアと回線に対する冗長構成を手に入れられると考えたのです。そして、万一のハードウエア障害が起こってもプロが24時間対応してくれるはずなので、自分でデータセンターに駆けつけなくてもいいわけです。
もちろんアプリケーション障害には対応できませんから、アプリケーションの障害やディスク容量のチェックなどには別途対応する必要がありますが、その点に運用をフォーカスできるので、従来の物理サーバーマシンと比較して非常に運用が楽になります。
コスト面では、仮想サーバーの場合、安いサービスの場合には月額数百円で提供されていますし、大手通信事業者が提供する基本構成の仮想サーバーでも月額数千円で始められます。ディスク容量や回線容量が大量に必要ではない場合にはメリットが多くなります。あるいは、サーバー利用のピークが予測できる場合には、事前に仮想サーバーの台数を増やしたりディスク容量を増やしたりできるサービスを利用することもできます。
顧客企業の重要なデータですから、顧客企業に対して専用の物理サーバーから仮想サーバーへ切り替えることを承認していただかなければなりません。不特定多数の仮想サーバーを利用する場合、感覚的に「大丈夫なのか」という懸念が生じますから、それを払拭するためには、「〇〇なので大丈夫です」という説明を用意する必要があります。
そのためには、大手のクラウド事業者であれば顧客企業も納得しやすいだろうと考えました。当然、大手のクラウド事業者では設備投資も十分に行われていて、冗長構成も安全な運用も行われていて、その説明資料も手に入りやすいだろうと考えました。
ます、大手2社を選定して簡単な問い合わせを行いました。問い合わせ内容は以下のようなものです。
- 仮想サーバーを提供しているサーバーマシンの冗長構成
- 回線の冗長構成
- ISMSやプライバシーマーク、その他の認証取得状況
- サーバーマシンの設置場所
メールで問い合わせを行いましたが、1社は3日後、もう1社は2日後に返事がありました。ネットのサービスで上記のようなユーザーとしては当たり前の質問に、即日あるいは翌日に返事がこないということに、はっきり言って残念な気分になりました。
そして回答の結果ですが、1社は、
- サーバーマシンの冗長構成はない
- 回線は冗長構成
- 未取得(サポートセンターはISMSを取得)
- サーバーマシンは国内に設置
もう1社は、
- サーバーマシンはコールドスタンバイで冗長構成
- 回線は冗長構成
- プライバシーマークを取得
- サーバーマシンは国内に設置
という回答でした。
とてもがっかりしました。両社共に大手クラウド事業者ですし、Webサイトでは「万全のセキュリティ体制」「金融機関も採用」「信頼の運用実績」などと書かれていて、当然やってるだろうことを、確認のために聞いた結果が期待とは違ったからです。
また一から事業者探しを始めなければなりません。その辺については次回、紹介します。