2010年11月、APECの開催に合わせて横浜でAPEC中小企業サミット(日本商工会議所主催)が催された。光栄にも日本代表パネリストとして、私も参加させていただいた。

 ひと言でいうなら、海外の起業家、それも女性起業家のパワー、旺盛な国際進出力に圧倒された一日だった。また、海外からのゲストがユーモアたっぷりに、かつ自分の言葉で人々を魅了するスピーチ力やプレゼンテーション力も大変勉強になった。今回はその一端をリポートしたい。中小企業のICT(情報通信技術)活用という面でも、見習うべきことが多々あったのだ。

バーコード&Webで生産者が見える

 チリの果物輸出企業サブソル社では一番食べごろの時期をパッケージに印字している。さらにバーコードを読み取れば、いつどこで誰が生産したかを海の向こう側からもWebサイトで知ることができる。それも、ただ農場の名前が表示されるだけではなく、農園の様子や生産者の顔をYouTubeで確認できる安心経営を実践しているのだ。

シンガポールをアジアの流行ハブに

 かつてシンガポールのコンテナ港を視察した際、自動倉庫さながらのハイテク国際物流の現場を見て驚嘆した。

 77thストリート社長が構想するアジア・ファッション・シティは、アジア各国からメーカー、デザイナー、リテーラー、写真スタジオなどを集めてコラボする。同国のハブ空港や港をフル活用し、安価に世界へ物流できるわけだ。

14歳少年がクールなSFXを制作

 映画「マトリックス」などで使用された世界一の特殊効果ソフトを製作するサイド・エフェクツ・ソフトウェア。50名の会社は最高の人材と産学連携で躍進中。同社が非営利目的でソフトを配布すると、最新映画の特殊効果を作り直すスゴいクリエーターが現れた。契約を結ぼうとアプローチしたら、なんとスペインに住む14歳の少年だった。

iPadでスピーチ原稿をスクロール

 パネル討論でお隣りだった同社の最高技術責任者が、プレゼン時にiPadを開いて目の前に立てた。何をするのかと思ったら、巨大な文字のスピーチ原稿が現れ、話すスピードでスクロールし始めた。PowerPointの画面とiPadの原稿、いわば2丁拳銃だ。原稿に目を落とさず、身ぶり手ぶりを交えた素晴らしいスピーチの秘密兵器だ。

日本的臥龍企業を国際化する政策

 東京大学の戸堂康之先生曰く、日本の中小企業は力があるのに国際化していない「臥龍企業」が多い。国内市場の大きさに甘んじ、伏した龍のように表に出ない。だが、国際化の必要性を感じていなかった中小企業も、少子高齢化社会では安穏としていられない。

 他国に倣い、中小企業を国際化する政策が重要だ。中でもICT活用で自動翻訳と通関手続きを支援してくれる簡便なワンストップサービスが欲しい。

Twitter&無線LANで現地生放送

 会場には無料の公衆無線LANが張り巡らされていたので、Twitterを思う存分に活用できた。自分へのメモ代わりにつぶやき続けたが、それが結果的に生放送になったようだ。多くのフォロワーから反響の返信をいただいて私も驚いた。ただ、公式Twitterで大会用ハッシュタグが周知されず、つぶやきの一覧が読めなかったのは残念だ。

Ustreamで全国放送&録画を熱望

 もっと残念だったのは、海外の閣僚や経営者の元気や知恵を紹介する絶好のチャンスだったのに、Ustreamで放送されなかったこと。会場にいるだけで国際化・情報化に対するチャレンジ精神が発揚したのは、私だけではあるまい。もし記録ビデオを撮っているなら、今からでもYouTubeで公開し、レジュメ共々ブログで共有させてほしい。

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 日本の中小企業は、実力があるにもかかわらず、国際貿易もそのための海外向けの情報発信も不十分なのは明らかだ。しかし、中小企業が労せずにネットで交易ができるプラットフォームを準備すれば状況は一転する。中小企業の海外進出に大いに期待したい。