前回、ホメオパシーのレメディは、ただの砂糖玉に水を染み込ませただけで、原料の砂糖のおよそ1000倍の価格になるという話を書いた。その上で、高価格はプラシーボ効果を最大限に引き出す仕掛けとなっていることを指摘した。

 価格1000倍のメカニズムは、残念ながらプラシーボ効果の増強という“良い面”だけではない。これにより、ホメオパシーはボロ儲けできるビジネスとなりやすい。

 それだけではない。儲けやすいが故に、ホメオパシーはニセ科学と結びついて、ビジネス的にはレメディよりも問題の多いものを販売している可能性が高い。

 そのことに私が気が付いたのは、前回触れた「沖縄の公立中学校に勤務する養護教諭が、生徒にホメオパシーのレメディを渡していた」という事例を通してだった。この養護教諭は、学校に砂糖玉をレメディに変換するという装置を持ち込んでいたという。

 いったい、この装置はどんなものだろうか。

 砂糖玉をレメディに変換する装置――19世紀にホメオパシーを提唱したサミュエル・ハーネマンの理論からすると明らかにおかしな装置だ。ハーネマンが提唱したのは、「毒物を含む水を徹底的に希釈すると薬効が現れる」ということだった。必要なのは希釈を行うフラスコだから、レメディの製造には化学実験と同じ手順が必要なはずである。となると、装置は卓上プラントのようなものになるはずで、手軽に学校の保健室に持ち込んでおける大きさになるかどうかは、少々疑問だ。