注文していたiPadが届き、ノートパソコンを使わずに仕事ができるかどうかを試しています。なんとか、2週間、ノートパソコンなしで過ごすことができ、重いノートPCを持ち運ぶことによる腰痛から解放されて、やれやれといったところです。とはいえ、「なんとか」という通り、いいことばかりでもありません。

 例えば、パスワード付きのZIPファイルをよく取り扱う機会があるのですが、その解凍と、解凍後の文字化けに悩まされています。ファイルによっては解凍そのものがちゃんとできなかったり、解凍後の文字化けは当たり前のように起こります。

 さらにWordやPower Point、Excelなどの業務ファイルを閲覧すると、改行の崩れやフォントの違いによる見え方の違いを体験します。お世辞にも、ノートパソコンがなくても十分だとは言えません。

 これらはまだアプリが十分に成熟していないからとも言えますので、時間が経てばもっとビジネスに使えるものになると期待しています。

 iPadでプログラムも書いてみました。感じたのは、セキュリティについて相当考えられているということです。アプリを作ったとしても配布にはアップルの審査がありますから、パソコンの世界のように、ゲームに仕込んだトロイの木馬を配ることはできません。仮にあったとしてもすぐにApple Storeから削除されてしまうでしょう。パソコンのウイルスのように、勝手に感染させていくということもできません。アプリをインストールするは、アプリをApple Storeから購入しないといけないからです。

 しかも、インストールされたアプリは、他のアプリの扱っているファイルにはアクセスできません。パソコンであれば、すべてのアプリは許された権限の中とは言え、相当自由に他のアプリのファイルにアクセスできます。あるいは、高い権限を持っているアプリの脆弱(ぜいじゃく)性を突いて、自分が持っている権限以上のファイルへアクセスすることができてしまいます。

 iPadにはそのような、これまでのウイルス感染のパターンは通用しないのです。

 つまり、ウイルス対策ソフトが不要で、かつ、軽量で素晴らしいユーザインタフェースを持つ端末が出てきたのです。前回は、これらを規制あるいは管理する必要性について書きましたが、単純に規制するのではなく、むしろ適切な管理の下で活用するようにした方がいいでしょう。

 ただし、iPadを使えば安全という思い込みは危険です。例えば、現在、業務のメールを利用している読んでいる方の多くは、会社のメールをプライベートのメールアドレスに転送していると思われます。業務のメールをPOPで読むということは、暗号化されていない状態でパスワードや本文がやり取りされていることになり、非常に問題です。パスワードが漏れてしまえば、誰でもメールを読めてしまいます。また、気軽に持ち運べる半面、簡単に紛失してしまうことも考えられます。

 今後、業務でのiPadの活用が進むと思われますが、技術的に正しいセキュリティ対策を施さないと、リスクは高まるばかりです。しかし、データを蓄積しない、外部メディアを使えなくする、専用アプリでしかメールを読めなくする---などのシステムの工夫で、安全にシンクライアント並みのことが実現できます。

 現在、社内のメールを外部サーバーを介して、安全に読み書きできるシステムとアプリを開発しています。iPadはセキュリティと利便性、そして高いコストパフォーマンスを実現できる新しい道具です。ぜひ、上手に使って安全に知的生産性を上げていきましょう。