iPadが世間をにぎわせています。発売以降むしろ加熱しているようにも感じられます。それは実際に使っている人に触らせてもらったりして、そのビジネスの可能性が再認識されたからだと思います。

 実は私もその一人です。iPadの国内販売が迫るにつれ、「流行モノは気に入らない」タイプなので、気にしないようにしていましたが、実際にモノを見てビジネス用途への広がりを確信するようになりました。

 あの画面の大きさであればリモートデスクトップを走らせればノートパソコンと遜色ないのです。そして、そもそもパソコンと違ってディスクの概念が全く異なり、iPadはウイルス対策のために他のアプリケーションの使っているメモリーやデョスク領域にはアクセスできません。また、アプリケーションは登録制であり、厳しい審査をパスしないと配布すらできません。パソコンのように、ウイルスを作って掲示板やメールで配布させることができませんし、勝手にアプリケーションをインストールさせることもできません。

 つまり、セキュリティ対策済みのノートパソコンのようなものです。これがあれば情報漏えいを気にすること無く会社のパソコンにリモートデスクトップでアクセスして情報を利用することができます。会社のパソコンの電源を入れっぱなしにしなくても、仮想コンピューターを使う方法もあります。

 これまでノートパソコンの持ち出しが禁止だった多くの会社が、この方法で外出先で仕事をするようになるのではないでしょうか。
 
 一方で自分のiPadを会社に持ち込む人も増えるでしょう。私の知人がノートパソコンの持ち込みが禁止されている会社で、堂々とiPadを使っているそうです。見た目はノートパソコンのようなのにiPadはノートパソコンではないという解釈をしているそうですが、会社では正式には決まっていないそうです。

 つまり、ノートパソコンじゃないなら持ち込んでいいよねということなのです。確かに、iPadをノートパソコンとして持ち込み禁止にするならiPhoneだってその他のスマートフォンだって持ち込みを禁止にしないといけなくなります。今さらそれはできないでしょう。そんなことをしたら個人のスマートフォンが持ち込めなくなってしまい、大きな反発を生むでしょう。

 しかし、iPadやスマートフォンは非常に高機能になっています。メモリーディスクの容量から考えて、そこに社内の情報を持ち出されたら膨大な量になります。しかも通信機能があるのですから、外部へ容易に送信できてしまいます。

 また、スマートフォンに限らず、普通のカメラ付き携帯電話もOCR機能が充実してきています。こうなると紙の書類だって、画面に映した情報でさえも簡単に携帯電話に取り込んで外部に送信したり持ち出したりできてしまいます。

 私物のノートパソコンを持ち込み禁止にするセキュリティポリシーは、ウイルスの持ち込みや情報の持ち出しを禁止にするためでした。ところが、今では携帯電話やスマートフォンで十分に情報を持ち出すことができるようになってしまったのです。

 さて、このようにスマートフォンはパソコン並みの機能に加えて、通信機能を持ちますので、活用の検討もさながら利用にあたっての規制やルールが必要になります。企業においてはセキュリティポリシーに個人のスマートフォンの持ち込みや利用にあたってのルールを書き込むことになりますし、業務に活用する場合を想定したルールの策定が急がれます。

 ところが、スマートフォンと言っても携帯電話機能を持つもの、無線LAN機能があるもの、通信機能は特に持たないがそれ以外の機能は充実しているもの、大きいもの小さいものなど、多種多様に存在するために、そもそも言葉の定義でつまってしまいます。現在、いろいろな方がiPadのような端末の定義を始めていますが、恐らく、全てを網羅しつつノートパソコンと明確に分離する用語の定義は困難であると思われますし、そのことに多くの時間を要することはあまり有意義ではありません。

 スマートフォンなどのもやっとした用語の定義程度にとどめておいて、肝心のルールの定義に時間を割いた方がいいでしょう。

 企業の競争力強化に欠かせないであろうスマートフォン(や、そのたぐい)を活用するためにもセキュリティポリシーの改訂を急がれることをおすすめします。