今回は、電子書籍の話題から離れて、口蹄疫の問題を書くことにする。

 宮崎県で飼育されている牛や豚の間で口蹄疫の感染拡大が止まらない。4月20日に最初の患畜が確認されてから1カ月、5月21日時点での感染確認は。累計で159例。殺処分対象の牛や豚は総計13万258頭。うち殺処分埋設完了頭数が7万2776頭。全く殺処分が追いついていない凄惨な状況になっている。しかも21日には、今まで被害がなかった宮崎県西都市でも感染例が出た。今後の対策を間違えると日本の畜産業が全滅するかもしれない非常事態だ。

 私は獣医学も農業経済も専門ではないので、この事態について直接のコメントをする資格はない。しかし、今回のことが、現在の日本のガバナンスを巡る問題をあぶり出すことにはなるだろうと考えている。民主党政権が標榜する「政治主導」である。

 「政治主導」というからには、それまでの自由民主党を中心とした政権は、日本という国の運営を主導していなかったという主張が込められている。では誰が主導していたかといえば、霞が関の官庁を中心とした官僚だ。

 政治が「良きにはからえ」で日本の運営を官僚に任せていた結果、天下りのような官僚利権が拡大してしまった。また、官僚は前例のあることには有能だが、新たな事態に適応した素早い判断を下すことはできない。政策判断は本来政治の仕事だ。
 
 だから「政治主導で行く」というのが民主党の方針だ。それがどの程度の実効性を持っているのかが、口蹄疫被害で試されている。