須川 賢洋、新潟大学法学部助教

 世間では何かと“パクリ”が話題になっているようで、上海万博のオープンにあたっても、そのテーマ曲が岡本真夜さんの「そのままの君でいて」の盗作ではないかということが問題になった。音楽の場合、他の著作物に比べて感覚的な要素が多く入り込むため、その作品が他の作品の盗作であるか、つまり著作権を侵害しているかどうかを判断することが難しくなる。通常はその作品にアクセスしていたかどうか(あるいはアクセスできる環境にあったかどうか)や、その作品をいくつかの要素に分解し、要素ごとにどの程度の類似性があるかを総合的に鑑みて、著作権侵害であるか否かを判断する。

 では、コンピュータープログラムの場合はどうだろうか。コンピュータープログラムも著作物である以上、いわゆる“パクリ”ソフトを作れば、著作権の侵害に問われかねない。しかしながら、ここにも音楽の場合とはまた異なる、ちょっと面倒な話がいくつか存在する。今回はソフトウエアの著作権と安全を守るにはどうすべきかについて少し述べてみたい。

 さて、コンピュータープログラムの場合、そのソースコードを直接比較することができるのであれば、そのプログラムが不正にコピーされたものであるかどうかを見極めるのは比較的容易い。ソースが同じならコピーであると割と簡単に言えてしまうからである。

 むろん、「プログラミングの手順や動作目的が同じであれば誰が作ってもほぼ同じソースコードになるのではないか?」という反論があり得るだろう。たしかに、画面に掛け算の九九を順に表示させる程度の単純なプログラムであればそういったことも起こり得る。しかし、およそ現在の複雑なビジネス用アプリケーションがそんな数十行程度のもので済むはずがなく、何千・何万行におよぶプログラムでそのソースがほぼ一致するなどということは一般的にはあり得ない。

 実際に判例では、「被告はオリジナルコードであることを主張していたが、調べてみたら、原告のプログラムのバグの部分までそっくり同じであった」などということはよくある話である。これを逆手に取って、ソース中に意味のないルーチンをわざと忍ばせておき、後々に不正にコピーされた際の証拠にするという手法も開発の現場では使われているようだ。