「タイムスタンプ」をご存知でしょうか。電子申請で入札する場合などに、確かにその日時に送信しましたという証明を得る用途に主に用いられてきました。タイムスタンプは、e-文書法でも欠かせない存在とされています。

 タイムスタンプというシステムが始まった当時は、その価格が決して安くはありませんでした。1つスタンプを押すのに10円を超えるものもありました。切手と比べれば安いと思われるかもしれませんが、今では当時の価格から10分の1以下のサービスもあります。それでもタイムスタンプは十分にIT社会に普及しているとは言えません。このコラムの読者の中でもタイムスタンプを利用したことがあるという方はとても少ないでしょう。

 本来のタイムスタンプの意味としては、正確な時刻を証明する時刻認証だけでなく、その時間に確かに存在していたという存在証明、内容が改変されていないという内容証明などの意味が含まれています。しかし、国内では「正確な時間を証明するもの」という認識が一般的となっています。これは「タイムスタンプ」という名称から連想する誤解でもあります。

 しかも、日本人の生真面目な気質から「タイムスタンプには精度が重要である」という考え方が定着してしまっているようです。確かに、時間に正確でないタイムスタンプなんて何の意味もないと思われるでしょう。

 例えば、最近の証券取引所の取引システムを巡る訴訟にもあるような、大規模な取引とそれに関わる損失の検証などにはとても正確な時刻精度が求められます。恐らく100ミリ秒の単位で正確さが求められる場合もあるでしょう。