前回に引き続き、著作権について書く予定だったが、前回掲載以降、東京都で恐るべき事態が進行している事実が急浮上した。今回は、そのこと――「非実在青年」都条例案――について書くことにする。
 先に結論を書いておくと、これは青少年保護の美名の下に、権力が市民を恣意的に支配する根拠を与える恐るべきファシズム条例だ。このような条例は成立させるべきではないし、間違って成立してしまった場合には、日本という国家の尊厳のためにも速やかに廃止に追い込む必要がある。

 小泉政権のころから、美しい名前の法律・条例で、実際には過酷な内容を国民に押しつける動きが目立っていた(その典型例が障害者自立支援法だった)。その集大成が、今回の東京都の動きであると言えるだろう。

 通称「非実在青年」都条例案――正確には「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正案である。東京都青少年の健全な育成に関する条例は、リンク先を読めば分かるように、ポルノ出版物、自殺や殺人を教唆する書物など「青少年の育成に好ましくないもの」を18歳以下の青少年に頒布することを禁じる条例である。
 現在開催中の2010年第1回定例都議会(会期は3月末まで)に、同条例の一部を改正案が東京都より提出されており、可決されれば4月1日から施行されることになる。

 条約改正案は、なぜか東京都のホームページに掲載されておらず、印刷物のみで流布している。すでにこの時点で、ネットという最も効果的な情報伝達手段を使用せずに、こっそりと条例改正を通過させようという薄暗い意志を感じることができるが、これだけネットが発達した現在、そんなことがうまく行くはずもなく、いくつかの場所に改正案の文面がアップされている。