前回、新型インフルエンザの危険性を見積もるには統計の考えを使えばいいという話を書いた。では、この冬を新型インフルエンザにかからないで過ごすにはどうしたらいいだろうか――そこで役立つのが確率の考え方である。
 確率、といっても、別に確率を具体的に計算するというような話ではない。新型に限らず、インフルエンザは「確率」でやってくる、ということを理解すればいいというだけの話だ。
 「確率って何? サイコロの1から6までの目が出る確率は1/6って学校で習ったけれどそれと同じ?」――確率についてこの程度しか理解していなくても大丈夫。それでいて、確率を知っているかいないかでは、新型インフルエンザに対する心構えは大きく違ってくる。

 そもそも論から入ろう。「確率って何?」――それは、ある出来事が起きるかどうかの「確からしさ」だ。サイコロを振れば、1から6までの目のどれかが出る。1が出るのかそれとも2がでるのか…サイコロが均一な材質でゆがみなく作られていれば、可能性は6通りで、そのどれもが同じぐらい出る可能性がある。だから、サイコロのどの目が出る確率も1/6ということになる。

 では、この1/6という数字は何を意味しているのだろうか。

 「サイコロを振っていると1の目が続けて2回とか3回とか出ることもあるよ。本当にどの目が出るのも同じぐらいなの?」――実際にサイコロを振った経験があるならば、こういう疑問は当然出てくるはずである。

 そこで出てくるのが「大数の法則(たいすうのほうそく)」だ。確かにサイコロを10回ぐらい振った結果だと、特定の目に偏りが出てくることがある。しかし、サイコロを振る回数を100回、1000回と増やしていくと、全体の振った回数に対して特定の目が出る回数はどんどん1/6、すなわち確率に近づいていく。これが「大数の法則」である。
 「回数を増やしていけば、必然的に確率で計算した通りの結果になるよ。例外はないよ」というのが、大数の法則の核心である。