ここまでの議論を整理しよう。「理想の自転車走行レーンとは その1」と「理想の自転車走行レーンとは その2」では、自転車走行レーンの必要性と、そのあるべき姿について考察した。「自動車社会を支えてきた社会投資」では、過去半世紀の間に、自動車を中心に日本の道路が整備されてきた様を見た。
 「全く新しい乗り物の出現」では、電動モーター+電池+制御技術の技術の進歩が、これまでとは全く異なる乗り物の出現を促していることを指摘した。そして前々回の「自転車2.0”はどんなものになるのか(その1)」と前回の「同(その2)」は、その全く新しい乗り物が人力とモーターのハイブリッドである“自転車2.0”というものになるのではないかという話をした。電動モーターは、排ガスを出さず、低速から十分なトルクが発生し、内燃機関に比べればコンピューターによる制御が容易だ。電池の容量や放電特性はかつてに比べてずっと向上している。コンピューターの進歩は言うまでもない。モーターそのものも、磁性体材料の進歩によってずっと軽量かつ高出力になっている。これらを人力と組み合わせ、さらに軽量化や走行抵抗の低減を進めれば、今までにない乗り物ができるだろう。

 “自転車2.0”は、以下のような乗り物だ。
 ●人力で動く 
 ●徹底した走行抵抗の軽減(転がり抵抗、空気抵抗など)
 ●可能な限りの軽量化
 ●洗練された制御系を持つ電動アシスト
 ●その結果、既存の乗り物にない利便をユーザーに提供する

 では、“自転車2.0”が便利な道具として社会に定着するために何よりも必要なものはなにか。それは、路上で、“自転車2.0”が安全に使える環境、すなわち自転車走行レーンだ、というのが私の主張である。