前々回、前回と、自転車専用レーンを作るとするならば、どのようなものが良いのかを考察してきた。その結果、自転車専用レーンを作ることにより、自動車が現在、法律の規定と実際の執行状況との狭間で享受している利便性が幾分制限されることになることが明らかになった。
 具体的には、道ばたでのちょっとした駐車が、自転車専用レーンが設置されることによって、かなり厳しい禁止行為とならざるを得ない。

 この問題は、「そこまでして自転車の利用を促進する必要があるのか」と捉えてはならないだろう。むしろ逆に「なぜこれまで、自動車は交通体系の中でそこまで優遇されてきたのか」と考えるべきである。

 自動車が優遇されているということは自動車のドライバーからは実感しにくいだろう。「こんなに道は混んでいるし、有料道路の料金は高いのに、どこが優遇されているのだ」と思う方が多いのではないだろうか。「ちょっとばかり自転車がブームになっているからといって、なぜ自転車専用レーンを作る話にまでなるんだ。自動車向けの道だってまだまだなんだぞ」という意見も聞こえてきそうだ。

 しかし自動車を降りて、歩いてみたり、自転車に乗ってみたり、同じエンジン付きでもオートバイに乗ってみたりすると、路上において自動車がいかに優遇されているかが見えてくる。

 例えば――交通量の多い時間帯に行うと危険なので、くれぐれも交通量の少ない早朝に、十分に注意して行ってもらいたいのだけれども――あなたの家の近くの幹線道路を自転車で走ってもらいたい。それも、通常は自動車が走っているあたり、道路のやや中心よりをだ(あまり右に寄って走ると道路交通法違反となる。注意のこと)。
 おそらく、通常走っている路肩や歩道よりもずっと走りやすく感じるはずである。
 同じ道路であっても、道の中央か、端っこか、といった場所によって整備の度合が異なる。自動車が通るところは綺麗に平らに舗装され、メンテナンスも行き届いているが、自転車が走る路肩はそうでもないことが多い。
 自動車が走る道の中央部分は平らで、自転車や歩行者が使う道ばたはでこぼこ――これは、日本という国が、過去何十年にもわたって、自動車をより便利に使えるように、自動車を優先して道路を整備してきたことの象徴である。