前回の続き、自転車専用レーンの構造として、路面ペイントのみでレーンを示す視覚的分離と、ガードレールや縁石なので物理的にレーンを車道や歩道から分離する構造分離の問題を考えていて、気が付いてしまったとんでもない問題点という話です。

 とんでもない問題点、それは「構造分離を採用して幅2mもの自転車専用レーンを作るとなると、道の片側に、自転車同士が対面交通する道を作ってしまうことになりかねない」ということだ。

 構造分離を採用して道の片側に自転車専用レーンを作った場合。自転車は対面交通となり、自転車相互が正面衝突する危険性が増大する。正面衝突を避けようにも自転車は歩道側にも車道側にも逃げることができない。
 構造分離を採用して道の片側に自転車専用レーンを作った場合。自転車は対面交通となり、自転車相互が正面衝突する危険性が増大する。正面衝突を避けようにも自転車は歩道側にも車道側にも逃げることができない。
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 懸念を図示してみた。自動車が片側1車線、あるいはそれ以上の広い道路に構造分離タイプの自転車専用レーンを設置した図だ。すぐに分かる通り、自転車専用レーンは道の片側にまとめられている。自転車は図中右向きに進む場合も、左向きに進む場合も、この専用レーン内を走ることになる。

 一見良い道路設計のように見える。自転車の通行レーンは確実に確保され、歩行者とも自動車とも干渉することがない。道路行政の担当者が、この設計に惹かれる可能性は高いと考え得る。

 が、自転車に乗り慣れた身からすると、これは危険極まりない設計だ。
 なぜならば、決して幅が広くない自転車専用レーン内に、速い自転車も遅い自転車も閉じこめられ、なおかつ図中右向きと左向きの両方の自転車が対面交通するからである。

 前回述べたように自転車は、車種によって走行速度が大きく異なるという、歩行者や自動車にはない特徴を持っている。時速15kmで走るママチャリも自転車だし、時速30kmで走るスポーツ車も自転車だ。だから、自転車が自転車を追い越すことは、日常的にあり得る。道路設計としては自転車相互の追い越しを考慮しなくてはならない。
 幅2mの自転車専用レーン内で自転車が自転車を追い越すことは可能だ。しかし、図示した道路では自転車が対面交通している。しかも、構造分離を採用しているので、自転車専用レーンの外にはみ出して正面衝突を回避することができない。