昨年の道路交通法改正で、あらためて自転車は基本的に車道を走行するという原則を徹底することになった。このために自転車走行レーンが整備されるようになったが、その出来が「とりあえず作っただけ」「誰の利便のためなのか分からない」「そもそも自転車が走りづらい」「かえって事故を誘発しかねない」??というダメなものであることがほとんどなのである。
 その理由として、前回の最後に、「そもそも警察官自体が、自転車と歩行者の区別がきちんとついていないのではないか」と書いた。警察の意識が、「自転車をきちんと交通体系の中に位置付けて、便利な道具として十全にその機能を発揮できるような道路交通体系を構築する」というところに至っていないようなのだ。

 だからといって、お上の作る自転車走行レーンに文句をつけるだけでは、面白くない。むしろ、「こういうのが良い自転車走行レーンですよ」と提示できるようでなくてはいけないだろう。今回は、「理想の自転車走行レーンはどんなものか」ということを考えてみよう。

 まず、警察庁がどのような自転車走行レーンを考えているのかを調べてみる。すると2007年5月24日に警察庁が開催した「第1回新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会」に提出された資料「自転車利用環境をとりまく話題」(pdfファイル)の中に、道路構造令に基づく自転車道路の変遷がまとめてあるのを見つけた。

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 道路構造令というのは道路法に基づいて政府が決定する政令だ。道路構造令で自転車道路には自転車のみが通行できる「自転車専用道路」、通行量の多い道路の車道側に原則として設置される「自転車道」、自転車と歩行者のための「自転車歩行者専用道路」、自動車の交通量の多い道路の歩道側に原則として設置される「自転車歩行者道」という4種類が規定されていることが分かる。

 前々回、前回と2008年の道路交通法改正により、自転車は原則車道を走行することが徹底されることになったと説明した。これに従うと、今後整備すべきは歩行者との事実上の混合交通を進める「自転車歩行者道」ではない。自転車と歩行者の事故が増えているということで、自転車は原則として車道を走行すべしとなったのだから、「自転車専用レーンを整備します」と言って「自転車歩行者道」を作るのは本末転倒もいいところだ。
 前回、良くない自転車走行レーンの例として挙げた平塚市の場合は、そもそも道路交通法改正の趣旨から考えると作るべきではない「自転車歩行者道」を作ってしまったということになるわけだ。

 今後整備していくべきは、歩道に同居する形で作られる「自転車歩行者道」ではない。道路の車道側に設置する「自転車道」なのである。