前々回、1万円そこそこの格安自転車が、私たちの「自転車という道具はこういうものだ」という相場観を大きく狂わせていることを指摘した。前回はそれを受けて、1978年の道路交通法改正によって「格安自転車でも十分」という道路環境が作られたことを説明した。

 実は道路交通法は昨年、2008年の6月にも改訂されている。しかも、自転車の歩道走行を認めた第六十三条の四も改訂の対象だった。

 まず、1978年に作られた第六十三条の四は以下の通りだ。

第六十三条の四 普通自転車は、第十七条第一項の規定にかかわらず、道路標識等により通行することができることとされている歩道を通行することができる。

 それが昨年の改正でこのように変わった。

第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。

 この改正の趣旨は、「自転車の歩道走行の要件の明確化と厳格化」である。あまりに自転車が歩道を無秩序に走るようになり、対歩行者の事故が多発するようになったので、警察庁も「歩道における自転車走行の無秩序状態をなんとかしなくてはいけない」と重い腰を上げたのである。

 これに伴い、「自転車は基本的に車道の左側を通行する」ということを一般向けにアピールされるようになった。警察庁ホームページに掲載されている自転車安全利用チラシ(pdfファイル)には、自動車安全利用五則として「1.車道が原則、歩道は例外」「2.車道は左側を走行」「3.歩道は歩行者優先で、車道寄りを走行」「4.安全ルールを守る」「5子どもはヘルメットを着用」が掲載されている。一番最初に「自転車は車道を走るものである」ということを強調しているわけだ。

 とはいえ、昨今の道路事情のままで、自転車を車道に押し出すと、今度は自動車対自転車の事故が増えてしまうだろう。というわけで、昨年の道路交通法改正以降、全国で自転車専用レーンが作られるようになった。

 警察庁もなかなか考えているな、と言いたいところなのだが…

 自転車走行レーンが、利用者(歩行者、自転車、そして自動車などすべて)のことを熟慮した上で設置されているとは言い難いのである。