うーん。何かいい手はないかな。
「どうした? 965アニキ」
940か。いや、おれたちCore i7三兄弟がもっとガツーンと売れるにはどうすればいいかと思ってな。
「えっ? 売れてるっしょ。深夜販売すごく盛り上がったんだよ」
920、お前は素直だな。あれはな、盛り上がったんじゃなくて、盛り上げたんだよ。あれだけ特価品を用意すれば人は来るだろう?
「初物好きの人が買っていっただけなんだよな」
おれたちゃ最新鋭の旗艦CPUだぜ、もっとガツーンといきてえなあ。
「どうかな。今までのマザーは使えない、しかも新しいマザーは高い。ついでにメモリーはDDR3を3枚挿し。全部組み直しだから高くつくんだよ」
弱気になるな、940。でも、確かにそこは弱いよな。夜中にこっそり店中の値札外しとくか。
「バレるって」
「でも、速いよ。一番下のボクだって、Core 2のQX9770より速いもの」
「用途によっては、だろ? 大体さ、おれたちの本命はサーバーだろ? そんな一般受けしない地味な用途にテレビCMやってくれるわけもないし」
それだ!
「どれ?」
キャッチコピーを考えよう。知ってるか? ノートパソコン用のブランド「セントリーノ」。あれのCMはすごいぞ?
「知ってるよ。この前、向かいのショップのデモ機で延々流れてた」
あれ、何で鳥なのか知ってるか? セン『トリ』ーノと引っ掛けてるんだぞ。しかも、新しい鳥の方が小さくて踊りが少しうまいんだ。気付いてたか?
『トリ』と『鳥』って!! 最高のセンスだよな。
「知らなかったよ、兄さん!」
「……」
おれたちもああいうのを真似してバーンと売ろう。
「じゃあ、『Core i7はWindows 7に最適です』ってのはどう? 次期Windowsのセブンとかけてみたんだけど」
いいんじゃないか。
「えっ…いいのかよ。別に関係ないだろWindows 7と」
セブンとセブンで分かりやすいじゃないか。そういう分かりやすさが大切なんだよ。……でも面白くないな。
「だろ」
「じゃあ、『セブン積分いい気分』。どう?演算に強そうなイメージ出てる?」
あはははは。
「兄さん! のんきに笑ってる場合じゃないよ」
いやいや、920、おまえ才能ありまくりだろ。電通からスカウト来るぞ。
「いやいやいや。その節、どこかで聞いたことあるから。っていうか積分って言っただけで演算に強いとか、どうなの」
じゃ、ちょっと別の方向に行こう。Core i7、CO RE I 7…。そうか!
これでどうだ?
『これいいな、ってあなたが言ったから、今日は私の自作記念日』。
「すごいよ兄さん! すてきな奥さんが小脇にRampage II Extremeを抱えてレジに走る姿が目に浮かぶよ」
だろう? 『CORE』を『これ』って日本語読みにしてみたんだ。普通気付かないだろ、これは。
「そこの2人。勝手に盛り上がってんじゃねえ。そのフレーズ、思いっきりパクリだろうが!」
940、お前さっきから否定ばっかだな。
「一緒に考えてよ。一番売れてないの、940兄さんなんだよ」
キャッチコピーなんだから、短い中にもおれらの特徴を出さないとな。
「ハイパーとブーストで速いです、みたいな感じ?」
それじゃちょっとインパクト弱いだろう。『パースレ入ってボブ効いてんのにパワゲで冷え冷えッスヨ』くらいじゃないと今どきの若いやつはピンと来ないんじゃないか?
「どこのヤンキーだよ!」
「Hyper-Threading四核心多達八個線程! Turbo強化簡単線程運算!」
「分かんねえよ!」
仕方ないな、直球でいくか。
「最初からそうしてくれよ」
『一気に5つもバージョンアップ!』
「ウソ付け」