都道府県や市町村の教育委員会、学校、警察など、いろいろなところで講演をさせていただいていますが、ここ数カ月、私自身の著作物と一緒にご案内している本があります。ミシマ社から出ている『12歳からのインターネット──ウェブとのつきあい方を学ぶ36の質問』です。

 著者の荻上チキさんは1981年生まれ。年齢差は親子(笑)に近いのですが、今年の春『モバイル社会シンポジウム2008』で対談したご縁があります。連載初回の年表を覚えていらっしゃる方はピン!と来るかもしれませんが、チキさんは16ビットパソコンが日本に登場した“その年”に生まれた「デジタルエイジ1期生」なんですね。
 日本のデジタル文化と共に成長した世代ならではの感性で綴られたショートショート的Q&A形式のメッセージは、子どもたちの視覚に届くであろうマンガチックなイラストと共にカンタンかつリアルに伝わってくるので、本が苦手な親子でもすんなりと読むことができるはず!と感じてご紹介しています。

 ところで、この「12歳からの」というタイトル。「中学生からの」ではないところがミソだと私は思っています。

 毎日子どもたちと向き合っていると実感するのですが、彼&彼女たちは、小学5年生の3学期ごろになると急に、それまでとは違った“何か”を醸し出すようになります。男女、家庭環境、その他いろいろな要素の違いによって“何か”はそれぞれ異なっているような気はしますが、子どもから大人への過渡期の階段を上り始めたらしい空気がそこはかとなく漂うのです。それは、小学校6年生と中学1年生との違いよりも大きいように思えます。

 前回お話ししたような「貸し出し用の携帯電話を用意し、保護者が手出しをしながら慣らし使用期間を経て‥‥」というステップを踏む方法がやりづらくなってしまうのも、この頃から。自立心も、思春期の感覚も、どちらも芽生え始めた子どもたちは、使い方を聞く相手は親よりも友達で、手を貸そうとしても「あーもぉいいよぉ、自分でやってみるから!」となりがち。“12歳から”の子どもたちは、小さい子どもと同じように接すると拒絶されてしまう可能性が大いにあるのです。

 12歳からのネット&ケータイ指導は、『考えて使うクセをつける』ことに徹するのがベストです。身近で手軽でカンタン“だから”考えて使っていない子どもが多く、トラブルの火種はほとんど、ソコにあります。