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尾花紀子「IT時代の子どもたちへ」

「携帯電話の学校持ち込み」を今一度考えてみませんか?

尾花 紀子=ネット教育アナリスト 2008/10/13 PC Online

 小中学生の保護者のみなさん、小中学校の先生方、全国の教育委員会関係の方々、今年7月に文部科学省が出した「子どもの携帯電話の使用に関するルールを策定するように」という通達をご存知でしたか?

 9月下旬、児童生徒の利用実態の把握に努めることや、情報モラル教育を充実させることなどの要請とともに具体案的なルールが例示され、新聞各紙でも紹介されました。聞き覚えのなかったみなさんは、以下の具体例と共に、この機会にインプットしておいてください。

-小中学校は持ち込み禁止を原則禁止とする
-通学時の安全確保に必要な場合は、機能を居場所確認や通話に限定する
-持ち込みを認める場合は、学校で預かるなど校内での使用を禁止する

 この『携帯電話の学校持ち込みは原則禁止』に対し、誰もが予想する通り、ネットでは賛否両論です。私の個人的な意見としては賛成・反対ではなく、

- 通学距離や地域や家庭の環境などの特性を考慮して、現状に適したルールを作ること。
-保護者の理解と協力を促し、児童・生徒がルールを守れる環境を整えること。
-大人たちの目や行動で、子どもたちが安全に生活できる地域を目指すこと。

……というような「学校」「家庭」「地域」三位一体の通達が必要だと考えますが、読者のみなさんはどう思われますか?

 国立・私立に限らず、電車やバスなどの交通手段を使って通学している子どももいます。学校の統廃合によって、徒歩や自転車での通学距離の延長を余儀なくされた子どももいます。ですから、文部科学省の示した「原則禁止」は、明るく危険ゾーンの少ない“比較的安全な通学路”があり“安心できるであろう距離”を登下校することを想定しての「原則」のはずで、どんな環境の学校においても「これを原則としなさい」と言っているわけではない、と私は想像しています。ところが、「原則」として通達しまうと「どんな学校でもコレが原則」と現場にはとらえられがちで、現に「携帯を原則持たせない」「学校への持ち込みは禁止」と一斉通知を出し始めている自治体も出てきています。

 そこで、賛成か反対か、是か非か、ではなく、冷静に「携帯の持ち込み」について、いろいろとシミュレーションしてみようと思います。

 数年前、某私立女子校でこんなことがあったそうです。

 「校内での使用は禁止」という条件で学校への携帯電話持ち込みの許可をした年、一人の生徒が持ち込んだ携帯電話が紛失しました。移動教室から戻ったら、通学鞄に入れておいたはずの携帯電話がないとのこと。生徒はすぐにそれを担任の先生に知らせ、先生たちから生徒たちに「携帯電話をどこかでみつけたら連絡をするように」と伝えられ、携帯電話の紛失は同じ学年の生徒たち共有情報となったのです。

 その晩、紛失したはずの携帯電話のメールアドレスから、嫌がらせメールがいっせいに届きます。紛失が周知の事実だったために、「一体誰がとって、誰が送ったんだろう」となりました。紛失を知らなかった先輩後輩たちにも、「あの時ケータイはなくなっていたらしい」と知るのに時間はかかりませんでした。

 その後、何事もなかったように携帯電話は彼女の通学鞄に戻されていたそうです。このことを話してくれた先生は、振り返ってこうおっしゃっていました。

 「もしも携帯電話を禁止したままあのことが起きたとしたら、と思うとゾッとします。隠れて持ち込んだ携帯電話がなくなっても先生には相談してくれなかったでしょうし、そうなると紛失の事実を周囲に知らせることもできなかったはずですから。」

 学校が「原則禁止」を示しても、残念ながら持ってくる生徒はいます。それは、子ども自身が手放したくない場合も多々ありますが、安全のために持たせる保護者も大勢いるからです。実際、保護者から強い要望で持ち込みを容認した小中学校もあるくらいです。

 NPO法人のCANVASが行った子どもたちへのアンケートによれば、歩行中の携帯通話が不審者を遠ざけてくれたという経験を持つ小中学生が結構いるとのこと。保護者が「安全のために」と思う気持ちは十分理解できます。ケータイ利用によって生じる危険への危機感と、連絡が取れるという安心感との板ばさみで悩んでいる保護者が、とても多いのではないでしょうか。学校側としても、禁止している携帯電話を見つけて没収した直後に何かが起きてしまった場合、責任が取れないという不安もあるのかもしれません。

 ただ、持ち込みを許可した途端、こんなことも起きています。

 就学時間中に、携帯電話が鳴るのです。個々が持っている場合も、職員室預かりの場合も一緒で、発信元はほとんど「お母さん」だそうです。女性は環境適応能力に長けていることもあって、とても短期間で、携帯電話で手軽にかつダイレクトに連絡が取れることの利便性を体得してしまうのです。そのため、夫でも子どもでも、ちょっと伝えたいことが生じると携帯電話に手が伸びる傾向があります。メールを送っておいて「帰りに読んでくれればいいわ」ならいいとしても、音声通話の着信もあって、先生方も困り果てている様子です。

 そもそも学校は、教職員という大勢の大人がいて、確実に生徒への連絡が取れる場所です。学校にいる子どもへの緊急性のある連絡は、学校に入れるのが当たり前。持ち込みを許可するにしても、学校側は毅然とした態度で「学校内にいる時の連絡は、必ず職員室(あるいは事務室)へ」と保護者に伝えるべき。便利な道具に慣れ、通学前に伝えるべきことを「いいわ、あとで電話すれば」になってしまわないように、家を出てから学校まで、学校を出てから家までの時間の連絡用であることを徹底しなければいけません。保護者も学校も、子どもたちへの見本として良識のある行動を取るよう心がけたいものです。こんな風に考えてみると、持ち込み禁止ではなく、校内では電源を切って使用不可を「大原則」に掲げるほうがより現状に即していると思うのですが。

 中学生になると知恵がつき、職員室に預けるのは機種変更の前の「使えないケータイ」という子もいます。休み時間にはメールをし、昼休みにはワンセグでテレビ番組を観るような使い方を“隠れて”する生徒も目に付きます。「大人に見つかりさえしなければ大丈夫」という感覚は、形や対象が変わりこそすれ、いつの時代の子どもにも(私たちの頃にも)ありますが、学校生活で学ぶべきさまざまなことを疎外するほどに食い込むものは、早急に改善策を模索すべき。闇雲に禁止をするのではなく、「ルールを守って利用する」ことの大切さを習得させるのも教育ではないかと思います。

 そこここにあった電話ボックスが姿を消し、公衆電話も探さなければ見当たらないところが増えました。公衆電話の設置台数を携帯電話がなかった頃に戻すことはできないのですから、危険要素が増えている現代の子どもたちの安全を考えると、携帯電話を完全に否定することはできません。

 携帯電話を持たせない選択をするのであれば、大人の目と行動とで子どもたちを守ってあげることが前提です。本気で子どもたちの安全を守りたいのなら、「学校」「家庭」「地域」の大人たちが意識的に取り組める体制作りを提唱しない「禁止」は、どうにも通用しない時代になってきたようです。

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