フィルタリングについてはこれまでも何度か触れましたが、判断力も知識も経験も雲泥の差がある、10歳未満の子どもと高校生のアクセス制限基準が同じだとしたら、それは全くナンセンスです。ちょっとでも不安要素があるコンテンツ(特にコミュニティサイト)を全て排除した状態で延々使い続けた“何の免疫も持たない無菌状態の子”が18歳になった途端に全面解禁となってしまう──これがどれほど危険か、冷静に考えれば誰でもわかることですよね。

 道路の渡り方、車の気をつけ方、信号の見方、知らない人への警戒などを教えず、自由な外出をさせないままに18年が過ぎ、18歳になった途端に「1人でどこへでも好きに行っていいよ、車の免許も取れるよ」と言い渡すような馬鹿げたことをするご家庭は皆無だと思いますが、ネットの歩き方も同様ですから。

 ここでちょっと、「(1)ネオンのきらめく夜の歓楽街」、「(2)ファッショナブルな昼間の若者の街」、「(3)アミューズメントパークや公園施設」の3つの場所にわけて、ご家庭における実社会生活上の危機管理をシミュレーションしてみましょう。

(1)ネオンのきらめく夜の歓楽街(例:歌舞伎町)

 できるだけ、18歳未満がふらふらすることを却下したい。特に、暗くなってからは「行ってはいけません!」ときつく言って聞かせなければ!

(2)ファッショナブルな昼間の若者の街(例:原宿の竹下通り)

 中・高校生が友だちと行くのなら、「必ず友だちと一緒に行動するのよ」「声をかけられてもついていったり連絡先を教えたりしたらダメだからね」「○○時までには帰っていらっしゃい」などと、その子の年齢や素養に応じて注意を促してから行かせるようにしています。

(3)アミューズメントパークや公園施設(例:ディズニーランド)

 小さい子であれば迷子にならないように手を離さず、ある程度しっかりしてきたら「ママは並んでいるから2人でポップコーン買ってくれば?」などと複数の子どもで短い用事を足すことを許可し、自分たちで行動できる年齢になれば大人が不在でも比較的安心できるから「行ってらっしゃい、遅くならないのよ」程度で送り出すのでは?

 あなたがお子さんに、「友だちと洋服を買いに○○(←ココには身近な繁華街を当てはめて想像してください)に行ってもいい?」と言われたら、何らかの注意の言葉をかけたり約束をしたりして出すか、年齢が低い場合は「大人が一緒じゃないとダメ」と言うか、どちらかではありませんか?

 ネットの中のコミュニティサイトには、運営者がサイトを健全に運営しているかどうかかに関わらず、悪質なことや犯罪に結びつくことなどを行う大人はいます。それは、交番があったり町内会の方が見回ったりしていても、昼間の繁華街でナンパしたり商品などを勧誘したりする輩がいることとなんら変わりはありません。大人の目も多く、健全に運営されていて、安心感の強いアミューズメントパークですら、絶対に何も起きないと言い切れないのと同じです。ネットの中だけが特別な状態ではなく、「健全」であれば「安全」であると思い込んでしまうのが、一番危険なのです(「いわゆる“有害情報”と子どもたち<女の子編>」参照)。

 でも、年齢に応じた安全性『年齢区分』を発売前に指示できるゲームソフトとは違い、誰もがいつでもコンテンツを作り発信することのできるのがインターネットのWebサイトですから、年齢に応じて利用の可・不可をネット上に表示することは物理的に不可能。

 そこで、フィルタリングの登場となるわけです。