小学6年生の美紀さんが夜、自分の部屋で勉強をしていると、ケータイにメールが来ました。友達からだったので楽しみに開いてみると、とても怖い内容でした。
 「ぼくの恋人が何者かに殺されました。ぼくは犯人が許せない。しかし、犯人をさがし出すシステムを開発しました。4時間以内にこのメールを9人に送ってください。そうすれば、コンピュータからあなたのデータは自動消去されます。もし送らなかった場合はあなたの住所がわかるシステムなので、犯人とみなし、あなたの家へしかえしに行きます」。美紀さんは怖くて眠れなくなってしまいました。

解説

 美紀さんに届いたこのメールは、たくさんの人に次々と転送されながら増殖する「チェーンメール」とよばれるものです。チェーンメールは人の不安感や善意を利用し、転送され続けていきます。

チェーンメールの種類

○怖い思いをさせ、転送させようとする恐怖系。「止めたらわかる」や「止めたら何かする」と書いてある。
○芸能人やテレビ番組を材料にした芸能系。「タレントが○○に来る」や「メールがどこまで届くか実験中!」などが多い。
○笑い話をテーマにしたお笑い系。「この話おもしろいから回して」などが多い。
○デマを信じさせて広げようとするデマ系。ウイルスの話などが多い。
○人の善意につけこんだ善意系。「困っている人がいるから協力してほしい」という内容が多い。

チェーンメールは迷惑メール

 一番の問題は、人を不快にさせるということです。自分が怖いから回すと、受け取った人に同じ怖い思いをさせる加害者になってしまいます。お笑い系でも、楽しいからと一方的に押しつけるのはよくないことです。自分は楽しくても、他人がどう感じるかはわかりません。迷惑なのは違法な広告メールと同じです。

 また、転送され始めるとだれにも止められないという問題があります。たとえ転送したことを後悔しても、もうメールを取り戻すことはできません。

 さらに、いつでもだれでも内容を変えることができるという問題もあります。いくつかの有名なチェーンメールは、内容を少しずつ変えて何カ月かおきに回っています。

チェーンメールの見分け方

 すべてのチェーンメールに共通しているのは、必ず「○人に回して」や「できるだけたくさんの人に教えてあげてください」などと書いてあることです。そう書いてあったら、どんなに怖くても、どんなにおもしろくても、どんなに気の毒でも転送してはいけません。

止めたらわかるシステムはあるか

 恐怖系のチェーンメールには美紀さんに届いたメールのように、「最新のシステムで止めたらわかる」などと書いてあることがあります。本当にそんなことができるのでしょうか。

 メールを送信すると、まず自分のメールサーバー(プロバイダーや会社などにあります)を通って、相手のメールサーバーに届き、そこから相手に配信されます。メールサーバーを見ることができるのはメールサーバーを管理している人だけで、その人も他のメールサーバーの中を見ることはできません。つまり、止めたらわかるということはあり得ないのです。安心して止めてください。

保護者の方へ

小学生のころからチェーンメールはやって来る

 筆者の経験では、チェーンメールは小学校6年生の夏前ぐらいから回り始めます。恐怖系は大人にはなんでもないのですが、子どもにとっては本当に怖い思いをするようです。また、善意系は純粋な子どもほど引っかかりやすいので注意が必要です。お子さんとチェーンメールについて話し合っておき、チェーンメールが来たらすぐに教えるように決めておくとよいでしょう。