ある女性グループの大ファンである中学2年生の由美さんは、グループの新曲が欲しかったのですが、今月は洋服を買いすぎてCDを買うお金がありませんでした。そんな話を学校でしていると、翌日クラスメイトの敬子さんから「これあげるね」と白いCDを渡されました。「これ何?」と聞いても、「いいからいいから。家で聴いてみて」と答えるだけです。家でラジカセにかけてみると、何と欲しかった新曲じゃないですか。そこへ高校生のお兄さんが帰ってきて、「それは著作権違反だぞ。すぐ返してこい」と言いました。由美さんは、「欲しかったCDなのになあ」と不満げです。

解説

 みなさんはもうわかったと思いますが、由美さんがもらった白いCDとは、女性グループのCDをコピーしたものです。著作権法では、音楽CDやパソコンソフトをコピーして、あげたり売ったりすることを禁止しています。

「ハッピーミュージックサイクル」とは?

 社団法人日本レコード協会が主張している、楽曲誕生からCD制作、そして販売までの流れです。

 作詞・作曲家が曲をつくり、演奏家が演奏して歌手が歌います。レコード会社はCDを制作し、それをCDショップが販売し、私たちが買います。そのお金の一部は作詞・作曲家に行き、次の曲づくりに使われます。このようにしてできた輪がハッピーミュージックサイクルです。

 音楽CDが無断でコピーされると、このハッピーミュージックサイクルが切れてしまいます。切れると次の曲がつくれず、私たちは好きな歌手の新曲を聴けなくなるかもしれません。そのために、著作権法という法律で音楽は守られているのです。

何が良くて、何がいけないか

○やっていいこと

 家庭内で自分の楽しみのために、自分でコピーするのは「私的利用の範囲内」ということで認められています。ですから、CDからお気に入りの曲を集めて1枚のCDをつくるのもOKです。家の人がそれを車で聴くのも問題ありません。ただし、それを他人にあげたり売ったりしてはいけません。また、コピーしたCDを学校放送で流すのも私的利用の範囲をこえるので認められません。オリジナルのCDを学校で放送するのはOKです。

○やってはいけないこと

 他人のために音楽CDをコピーしてはいけない、というのが基本的な考え方です。売るとかあげるとかは関係ありません。学校の合唱コンクールの練習用に、クラスの人数分コピーするのも著作権の侵害になります。遊びならダメで、学校ならいい、ということもありません。また、コピーCDと知っているのにもらったり買ったりしてもいけません。由美さんのように、もらったときにはわからず、後でコピーだとわかったら、やはりすぐに返すのが一番安心です。何かの理由で返すことができないなら、すぐに捨てるなり処分しましょう。違法な品を持っていると考えると、気分もすっきりしませんからね。

○カセットに録音したのもダメ

 コピーには、カセットテープなどのアナログ録音と、CD-Rなどのデジタル録音があります。アナログ録音はコピーするたびに音質が落ちますが、デジタル録音では音質はオリジナルとまったく同じです。そのため、デジタル録音はダメだけど、アナログ録音ならいいと思っている人がいるかもしれません。しかし録音方式は関係ありません。コピーがダメなときは、どの方法でもダメなのです。

保護者の方へ

知らぬ間に違法行為 子どものCD利用に目配りを

 デジタル技術が発達し、今では子どもでも簡単に本物と同じ音質の音楽CDをつくることができるようになりました。音質が落ちるカセット録音時代と違い、音楽団体や音楽関係会社は相当ピリピリしています。ファイル交換では警告を送っている例もあります。お子さんがハッピーミュージックサイクルを切ることがないよう、お子さんのパソコン利用には気をつけてください。