月曜日。朝っぱらからバタバタしていた私の耳に飛び込んできたのは、「発端は、7月4日に放送された、爆笑問題が司会を務める日本テレビ系バラエティー番組『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』」という音声。「え?なに?私が出演した回じゃない!」と慌てふためいてテレビの前に向かったのでした。

 それは、「爆笑問題の太田光を殺します」という殺人予告を2ちゃんねるに書き込んだ容疑者が脅迫容疑で逮捕されたというニュースで、同様の書き込みを複数回繰り返した32歳の容疑者は、「殺すつもりはなく、ユーモア、冗談のつもりだった」と話しているとのこと。

 「匿名性があるネットとはいえ、模倣犯的な書き込みをしたら逮捕される」というニュースは山ほど報道されているのに、年齢を問わず、どうして繰り返されるのでしょう。「世間を騒がせたかった」「注目を浴びたかった」という自己主張が動機の人もいれば、「どんな反応があるか知りたかった」「単なる悪ふざけだった」「こんな大事になるとは思わなかった」という興味本位やイタズラ心でやった人もいますが、いずれにしても、みんな逮捕されたくてやっているのね、と解釈しなければ納得できないほど後を絶ちません。

 そもそも、「こういうことをやったら、その後、どんなことが起きるだろう」というシミュレーションをする間もなく衝動的に書き込めてしまうのが、インターネットの欠点です。特に、手のひらサイズのケータイは超お手軽な入力端末で、いつでもどこでも気軽に書き込むことが当たり前のような気にさえさせてしまいます。

 また、メールが来たら即返信を返すのがクセになっているニュータイプの子どもたちは、反射的に入力していることを自覚していない可能性も否定できません。

 そこで。衝動的な書き込みで検挙や逮捕といった事態を招かないためには、具体的に何をしたらいいと思いますか?

 正解は、「大人と子どもとのコミュニケーション」です。こういったニュースを一緒に見たり読んだりしながら、それについて子どもたちと会話をすることがとても大切なのです。

 まず、個々のケータイからの書き込みだけではなく、自宅・学校・ネットカフェといったさまざまな場所にあるパソコンからの書き込みも、IPアドレスを手がかりにどこから誰が書いたものか割り出すことは可能だということをきちんと話す必要があります。IPアドレスがよく分からない場合でも「警察が動けば書き込んだ人は必ず見つかる」という前提で話せばいいのです。その上で、「なのに、なんでこんなことをするんだろうね」と子どもたちに問いかけてみるのです。

 子どもなりにいろいろな理由や心情を話してくれるはずですから、稚拙なことであっても笑わずにどんどん話を進めましょう。これは、学校のホームルームなどの時間を利用してクラスでもできるコミュニケーションです。

 小学校高学年以上の子どもたちには、刑法の話をしてもいいかもしれません。

・特定の個人を脅迫したら「脅迫罪」
・暴力的な表現を用いて業務を妨害したら「威力業務妨害」
・嘘の情報などを用いて業務を妨害したら「偽計業務妨害」
・上記3種に該当しないイタズラ目的でも「軽犯罪法違反」

 という犯罪の犯人になるのだということを知っているのと知らないのとでは、子どもたちの感覚も違うはずですから。

 「ある言動についてシミュレーションをしてあれこれ考える」ことが、何気ない日常の中で当たり前のように繰り返し行われるようになれば、「やっていいことといけないこと」の認識が生まれますし、知らず知らずに考えて行動をするようにもなっていくのです。

 大人が子どもとのコミュニケーションを横着してはダメ。ニュース素材だけではなく、会話のネタはそこここに落ちていますから、たくさん話してたくさん考えさせて、シミュレーション・スキルを訓練してあげましょう。大人と好んで会話をするような子どもになれば、考える力、対応する力がより一層パワーアップすること間違いなしですから。

 夏休みど真ん中の次回は、有害情報と子どもたちについて、触れたいと思います。また2週間後に!