連載開始早々唐突ですが、目を閉じて、あなたが子どもだった頃の道具について記憶をたどってみてください。幼い頃、小学校の6年間、中学生時代、高校生活の日々‥‥テレビがいつの間にかモノクロからカラーになったこと、そろばんから電卓に変わって劇的に便利になったこと、ウォークマンを手に入れた時の嬉しさなどなど、身近な変化がいろいろ思い出されてきますよね。でも、その記憶の中にパソコンは登場しましたか?ケータイは??

 子どもの頃の記憶の中にITツールが見当たらない親世代の大人たちは、自分の歩んできた歴史の中でITを“後発の文化”として受け入れてきた世代なのです。人生の先輩でもあり、守ってあげる立場でも導いてあげる立場でもある私たち大人が、IT時代の子どもたちにしてあげられることって一体どんなことなのでしょう。

 ここでは、子どもたちを取り巻くネット環境の現状や、ごくごく身近で起きている出来事などをご紹介しながら、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

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 電源をオンにし、クリックするだけで全世界につながるインターネット。今の子どもたちにとって、パソコンやケータイからインターネットを利用することは、テレビで番組を楽しむことや電話で友だちと会話することと、全く変わりません。

 「親世代の私だって“ごく普通の道具”として日々使っていますよ」

 そうおっしゃる方は多いと思いますが、IT文化の存在が当たり前という環境の中で生まれ育った子どもたちと親世代の感覚の差は、実はかけ離れているのです。それは、アメリカで生まれ育った日本人の子どもと、日本に生まれ育ち、社会に出てから仕事で使うために大変な努力をして学んだ大人との、英語でのコミュニケーション能力(あるいは生活能力)の差みたいなものとでも言えば、実感いただけるでしょうか。

 ここで、1980年~2000年のIT環境の変化と世代を、1つの表にまとめてみましたのでご覧ください。

 表中にない、50代以上のみなさんは、社会に出てしばらく経ってからIT機器が登場したため、できるだけ使わずに仕事をした人と積極的に使ってきた人との間で、感覚にもかなりバラツキがある世代です。40代は、社会人になったのとほぼ同時くらいにパソコンを使い始め、ビジネスのキャリアとIT機器ユーザーとしてのキャリアを一緒にはぐくんできた世代となります。30代は、大学時代に多少使った経験もあるものの、「ビジネスユース」として整った環境で使い始めた世代です。

 そのため、30代以上の大人たちは比較的きちんとお行儀良く使うことができ、機密情報をブログに書いてしまうような感覚は「信じられない」」「理解不能」だったりします。