今回は、僕が学生の頃にとある先輩に言われた話をします。

 当たり前のことだけど、なかなかできていなくて僕も忘れちゃうこと。

 それは、食事とか何かでおごられた時には、必ずしっかりとお礼を言って、それをずっと覚えておいて、次会った時も「この間はご馳走様でした」と言いなさいということ。

 僕は、ほんとにそういうところで気が利かず、心がけないとお礼を言い忘れちゃうタイプなので、その先輩は心配して言ってくれたのかもしれませんが、このアドバイスはほんとにいいアドバイスだったなぁ。と。

 というのも、世の中は、

 「おごられている方は、自分がおごってもらったという意識がない。
  でも、おごった方は、自分がおごってやったという意識は強い」

 これは、真理だと思うからです。

 例えば、ワガ社の財務部長、コージ藤川君は、何を隠そう僕が学生時代に塾の講師をしていたときの教え子だったりします(と言っても、年が5つしか離れてないので、先輩後輩のようなもの)。それもあって、カヤックにジョインするまでは、一度たりとも食事代を出させたことなんてなかったのですが、当の本人はさっぱり覚えておらず「あれ?そうでしたっけ?」と言う始末。

 コージ藤川は、どうやったらこんなに立派に育つんだろうというぐらい誠実に人柄よく育てられています。そんな彼でもこれでは、まぁ、世の中のほとんどはそういうものなんだろうなと思うわけです。

 でも、おごられた方はすっかり忘れていても、おごった方はそういうわけにはいきません。もうそれは、いつまでも覚えている。一度おごっただけでも「あいつは俺が面倒見てやった」ということになるのが人の心理なのです。

 例えば、最後の会計で、割り勘をして、ひとり2000円で集めている中、「先輩だから、俺だけ3000円出すよ」と言ってくれたケースがあったとします。

 2000円出してる人にしてみれば、自分も出しているので、1000円多く出してくれた人におごってもらったというような感覚まではなかったりします。

 でも、3000円出した方にしてみれば、「よーし、おごってやったぞ」という気持ちになっているわけです。

 だから、気をつけなければなりません。2000円出した人も、自分より多く3000円出した人がいたら、「ご馳走様でした!」って深々と頭を下げなければなりません。

 そうじゃなきゃ、失礼なやつだなということになってしまいます。

 そういえば、カヤックの創業間もない時期。創業メンバーが3人で同じ部屋(住居兼オフィス)で、川の字に寝て暮らしていた頃。3日連続、ご飯にシーチキンの缶詰をかけて、食べていた頃。

 そんな時期、見るに見かねて、うまいものをご馳走してくれるような御仁との会食の後は、会計をしている御仁よりちょっと先に店から出て、店の前に3人整列して、「ご馳走様でした!」と、それはそれは大きな声でお礼を言っておりました。
 
 「君たち挨拶だけは気持ちがいいね」と。