職場でのウィンドウズ・ビスタの導入が、遅々として進みません。弊社のWeb媒体「IT Pro」がこの4月に実施した調査によると、ビスタを採用している企業は全体の3.9%。前年調査時の3.2%と比べ、わずか0.7%しか伸びていません。一方、ウィンドウズXPの導入比率は82.2%。前年の76.9%から5.3ポイントも伸ばしました。ビスタが登場して一年半経過したのに、XPのシェアは落ちるどころか、かえって増え続けています。

 なぜ、ビスタが職場で普及しないのか。ある大手建設会社のシステム部長の見解は明快です。「ビスタはシステムの継承性を十分に考えていない」というのです。同社は、ウィンドウズ2000上で自社開発の専用アプリケーションを動かしていましたが、それらがビスタ上で動くか検証したところ、何と500以上のプログラムが正しく動作しなかったそうです。ビスタ移行に伴う導入費用もバカになりません。この会社が所有するパソコンは約1万5000台。ビスタに移行するには、少なくとも15億円以上のコストがかかるそうです。「それだけのお金をかけて、わざわざ現場の混乱を招くようなことを誰がしますか」とシステム部長は語気を強めます。同社は現在、ウィンドウズ2000からXPへの移行を進めています。

 ほかの企業で話を聞いても「ビスタはNetWare(サーバーOSの1つ)がサポートされていないので、アクセスできないサーバーが出てくる」といった話もよく耳にします。こうした問題が放置されたままでは、企業のシステム担当者が安心してビスタ移行に踏み切れないのも無理はありません。件のシステム部長氏はこう明言しています。「うちはXPが死ぬまでトコトン使い倒しますよ」。