昨日、ハイドンの交響曲第79番から第81番までを収めたCDを聴いた。

 ハイドンは交響曲を第104番まで書いている。その「第79番」と言われて、どんな曲か答えられる人はめったにいないだろう。ハイドンの交響曲には大好きな曲がいくつもあるが、さすがに104番まであるとなれば、聴いたことのある作品はそのごく一部に過ぎない。

 「せっかく104曲もあると言うのに、これではマズいのではないか」

 かつてワタシはそう考えて、ハイドンの交響曲を第1番から順に第104番まで聴くことに決めた。

 まずCDを入手せねば。ちょうど激安のBOXセットが出ていたので、これを求めることにした。アダム・フィッシャー指揮オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団による全33枚組の大全集だ(Brilliant Classics)。これがなんと1万円ほどで売られており、「なんという廉価なことか。1枚あたりの価格を考えれば、まるでタダのようなものではないか!」と喜び勇んで買い求めた。

 ……というのが、1999年の話。そう、ワタシは1999年にこの全集を買い、以来ハイドンの交響曲を聴きたくなると律儀に頭から一枚ずつ聴き、2008年の今年になってようやく24枚目の交響曲第79番にまでたどり着いたのだ。ついに比較的有名曲の多い第80番台が見えてきた! ここまでに9年かかっている。あと残るところは、えーっと、9枚か。アダム・フィッシャーはこの大全集の録音に14年をかけたと言うが、せめてそれよりは短時間に最後まで聴き終えたいものである。

 全集を見ると「無性に買いたくなる」一方で、いったん買ってしまうと「なかなか聴けなくなる」のはワタシだけだろうか。買った段階で、ひとまず欲求が満たされてしまうためか、たとえまだ中身を聴いていなくても、いったん自宅の棚に収ってしまったCDは、お店に並ぶ商品ほど新鮮に見えない。

 いかにワタシが怠惰なリスナーであるとしても、欲しいものから1枚ずつ買って聴けば、33枚を聴くのにこんなに時間がかかることはない。このハイドンの交響曲全集が発売された当時は、ありえない価格設定だと驚いたものだが、その後、CDの世界ではさらに価格破壊が進行している。