周辺機器メーカー大手のバッファローとアイ・オー・データ機器が中国に進出している。数年前には香港の電脳街でバッファロー製品をよく見かけたが、最近では、中国の上海など沿岸部の都市で、両社、特にバッファローの製品を見るようになった。現地の日本人向けフリーペーパーで広告を見かけることも多い。日本の周辺機器メーカーの中国進出について、両社はどう考えているのか。担当者に話を聞いた。

日本での活躍をアピールしてブランド価値をアップ

 多くのメーカーのWebページは、現在販売している製品を紹介しているはずだ。ところがアイ・オー・データの中国語版Webページを見ると、中国で販売している製品を紹介するのではなく、日本で販売する予定の新製品を掲載している。

これはどういうことか。

 アイ・オー・データ機器の開発本部広報宣伝部広報課の武井亮太氏によれば「現在はブランドイメージを構築している途中。そのためWebを使って日本市場でいかに活躍しているかをアピールしている」のだという。

 同社の中国法人は現在、上海を中心に展開しておりコンシューマーや現地法人をターゲットにしている。ただ実際には、電脳街で同社製品をたまに見かける程度なので、コンシューマー向けの販売量はまだこれからというところだ。

 中国市場の可能性について、広報課の武井氏はこう語る。「市場の可能性、魅力は十分に認識している。それ以外に、日本向けに低価格で良質の製品を仕入れるという現地法人としての役割も大きくなっている」。

 今後同社は、「まずハードディスク製品から展開を強化する」(武井氏)という。これは、「中国で使うパソコン周辺機器の多くは、電源仕様が日本と異なる。ハードディスクはこの仕様の違いに左右されない」(同)からだ。中国のパソコンメーカーへのOEM案件もあるため、OEM仕様の製品開発にも注力していくという。

製品ジャンルによって販売代理店を使い分ける

 バッファローと中国の付き合いは長い。中国のパソコン普及は2000年を過ぎてから本格化したが、その時点で同社は既に香港での展開を開始していた。当時筆者も香港の電脳街でバッファロー製品をよく見かけた記憶がある。今回取材したバッファローのAP営業部次長・佐野守計氏は「現地の販売代理店の努力で、香港におけるシェアが非常に高くなっている」と好調さをアピールする。

 同社の中国語版Webページでは、中国市場向けネットワーク機器とポータブルハードディスクを主力製品として掲載している。「無線LAN製品で細々とはじめ、現在はネットワーク機器なら中国8都市を拠点に、20都市程度をカバーしている」(佐野氏)という。扱い品目は増やし続けており、ポータブルハードディスクやNASなどのストレージ製品、PCアクセサリー類まで幅を広げている。

 バッファローの展開が面白いのは、製品ごとに展開する都市が違うところ。製品ジャンルごとに販売代理店が異なるからだ。

 中国に進出当初は、いくつかの販売代理店に「バッファローの全商品を扱ってほしい」と相談した。しかし「代理店同士がお互いをけん制し合ってしまいうまくいかなかった」(同氏)という。

 近年、その方針を転換して、製品ジャンル毎に販売代理店と提携した。例えば、ネットワーク機器ならChina National Electronic Devices(中国電子器件工業有限公司)、ストレージ/NASはシンガポールECSの中国法人ECS(社佳杰科技(中国)有限公司 )、アクセサリーならSoliton(索利通)を使っている。この方法にしたとたんに「注文量が増えた」(同氏)という。

 アイ・オー・データ機器、バッファローともに中国での展開はこれからが勝負。日本と中国では電圧が違うため、パッケージ、マニュアル、ドライバー類を中国仕様にするだけでは販売できない。中国の電圧に対応させ、動作テストも必要になる。

 こういった事情を考えると、「高所得者層を狙ってポータブルハードディスクの展開を強化している」(バッファローの佐野氏)というのもうなずける。USBポートから電力を供給する2.5インチのポータブルハードディスクなら、電源の違いが問題にならないからだ。しかも今、中国市場ではポータブルハードディスクのニーズが高い(前回の記事参照)

 以前中国では、電脳街を中心にさまざまなノンブランドのMP3プレーヤーや、USBメモリーが売られていた。しかし、消費者に製品ジャンルが浸透するに連れて、ブランド製品が棚を占有するようになっていった。バッファローやアイ・オー・データ機器がポータブルハードディスクによる実績を武器に、中国の消費者に「信頼できるメーカー」として認識されれば、今後の展開にさらに弾みがつくことになる。