もはやWebサイトは、「Webページ」といった静的な読み物ではなくなった。動画や音楽など多彩なコンテンツを含み、ゲームや画像加工、オフィスソフトなどの機能を備えた「Webアプリ」としても使える。そんなWebの進化を強力に後押しする技術が「HTML5」だ(図1)。
HTML5は、Web関連技術の標準化団体W3Cが策定を進めるHTMLの最新バージョン。仕様策定の最終段階である「勧告」を2014年に予定しているが、2011年5月に「最終草案」が公表され、仕様がほぼ固まった。これに合わせて、WebサイトやWebブラウザーのHTML5対応が急速に進んでいる。ブラウザーでは、Firefox、Google Chrome、Opera、Safariが先行していたが、Internet Explorer(IE)も2011年春に公開したIE9で一部機能を除いて対応。2012年に登場する見込みのIE10で、本格的な実装を進める。
HTML5の特徴の一つは、文字やグラフィックスなどの表現力が向上し、動画や音楽などをプラグインなしで再生できるようになること。これまでは「Flash Player」などのブラウザー用プラグインを使う必要があったような多彩なコンテンツを、Webブラウザーの機能だけで実現できるようになる。
プラグインが不要になると、何が便利なのか。そのメリットは、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器でより鮮明になる。
例えば、Flashを利用したWebサイトの動画は、Flash Playerが使えないiPhoneやiPadでは再生できない。しかし、WebサイトがHTML5に対応すれば、プラグインなしで表示できるコンテンツが増え、「iPhoneでは動画が再生できない」といった問題が生じなくなる。同様に各ブラウザーのHTML5対応が進めば、ブラウザーの種類や、パソコン版とスマートフォン版の違いなどを超えて、どのWebサイトも同じように表示して利用できるようになる(図2)。Flash Playerの開発元である米アドビシステムズも、2011年11月、スマートフォンなどモバイル機器向けのFlash Playerの開発終了を発表。モバイル機器についてはHTML5を推進すると宣言した。iPhoneなどがFlash Playerに対応しない以上、モバイル端末でのFlash普及は見込めないと考えたためだ。
同社は、パソコン向けには従来通りFlash Playerの開発を続けるとしているが、パソコンと同等のWeb体験をモバイル機器で実現する技術としては、HTML5への投資を拡大するという。