2011年は、NTTドコモのLTE方式の通信サービス「Xi」(クロッシィ)が大都市近郊で利用可能になった。UQコミュニケーションズが手掛けるモバイルWiMAX方式の「UQ WiMAX」、イー・アクセス(イー・モバイル)が展開するDC-HSDPA方式のサービス「EMOBILE G4」なども、幅広いエリアで使えるようになった。これらのサービスはおおむね下り最大40Mbps前後だ。

 2012年はさらに新世代のサービスが立ち上がる。屋外の広域をカバーする移動体通信でも下り最大100Mbps以上という速さが現実のものになるなど、大きな期待が持てる1年となりそうだ(図1)。

●2012年に予定されている通信インフラ関連の主な動き
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 2月に登場が予定される高速サービスは、ソフトバンクモバイルの「SoftBank 4G」(図2)。下り最大110Mbpsの速さが最大の特徴だ。ただし、当初提供するモバイルルーターは下り最大76Mbpsの予定。このほか、3月にイー・アクセス、12月にKDDIがLTE方式の通信サービスをそれぞれ始める。ドコモは、秋から利用可能になる新周波数帯を使い、東名阪以外のエリアでLTEの下り速度を最大100Mbps、上りも最大37.5Mbpsに引き上げる計画だ。

●ソフトバンクとKDDIが新サービスを開始
図2 ソフトバンクモバイルは、2月にTD-LTE(AXGP)方式の「SoftBank 4G」の商用サービスを開始。最初の端末はモバイルルーター(左)で、下り最大76Mbpsの予定。12月にはKDDIがLTE方式の商用サービスを始める。右は同社によるLTEのデモ
図2 ソフトバンクモバイルは、2月にTD-LTE(AXGP)方式の「SoftBank 4G」の商用サービスを開始。最初の端末はモバイルルーター(左)で、下り最大76Mbpsの予定。12月にはKDDIがLTE方式の商用サービスを始める。右は同社によるLTEのデモ
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 屋内の通信環境では、公衆無線LANに注目だ。セブン&アイ・ホールディングスは、一定時間は無料の公衆無線LANサービス「セブンスポット」を2011年秋から段階的に導入中(図3)。2012年2月下旬にはセブン-イレブン、デニーズ、イトーヨーカドー、西武百貨店など、東京23区内の全1400店を網羅。2013年2月には全国の1万4000店に拡充する。コンビニエンスストアで無線LANが使えるようになれば、スマートフォンユーザーの利便性は大幅に高まる。

●公衆無線LANも充実
図3 セブン&アイ・ホールディングスは「セブン-イレブン」などグループ1万4000店に無料の公衆無線LANサービスを導入中。コンビニでも無線環境の整備が進みそうだ
図3 セブン&アイ・ホールディングスは「セブン-イレブン」などグループ1万4000店に無料の公衆無線LANサービスを導入中。コンビニでも無線環境の整備が進みそうだ
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 業界内に目を向けると、総務省は、電波再編で空きになった900MHz帯の電波を携帯電話事業者に割り当てる予定。各社ともスマートフォンの普及で3G回線がパンク寸前となっており、新規の周波数帯は混雑緩和の強い味方となる。しかし火種もくすぶる。今回の割当先は社になる見込みで、激しい争奪戦になるのが必至の情勢。「当社が割り当てを受けられなければ総務省を提訴する」(ソフトバンクモバイルの孫正義社長)との声まで挙がる。割り当ては2月下旬にも決まり、7月25日以降に携帯電話事業者の準備ができ次第、利用可能になる予定だ。