ここ1~2年ほどの間で、爆発的に普及したスマートフォン。米アップルの「iPhone」に加え、2010年には米グーグルのOS「Android」を採用した製品も相次ぎ発売され人気となった。加えて、電池駆動でインターネット接続に第3世代携帯電話(3G)回線を使う、いわゆるモバイル無線LANルーターも大ヒット。パソコンでのインターネット接続が従来より格段に便利になったほか、iPod touch、iPad、携帯型ゲーム機などを持ち歩き、外でネット接続をする人も着実に増えている。

 こうしたモバイル端末が増えた半面、問題も起きている。端末の台数やユーザーの利用頻度の急増ぶりに3G網の整備が追いつかず、3G回線のデータ通信速度が低下するケースがみられるのだ。

 とりわけ問題が大きいのは、都心部のターミナル駅など、狭い空間に多数のユーザーが集まって、一斉にインターネット接続するような場面である。YouTubeなどの動画閲覧はほとんどできず、Twitterやメールなどテキスト情報のやり取りでも数十秒待たされるといった光景は、もはや日常茶飯事である。携帯電話事業者各社も基地局の増設や回線容量の拡充といった対策を講じているが、端末が急増している現状ではモグラたたきに近い状況だ。

3Gのイライラとおさらば

 そうした状況で有用なのが、公衆無線LANサービスを利用するという対策法である。公衆無線LANは、文字通り幅広いユーザーに向けて無線LANのサービスを提供するもの。3G網のように全国津々浦々をくまなくカバーするものではないが、大都市圏の駅や空港をはじめ、多くの人が集まる地点で提供されている。最近では、東京中心部のJRや地下鉄の駅がほぼ網羅され、郊外の私鉄にも順次アンテナが整備されている。また、喫茶店やファストフード店のチェーンでも、公衆無線LANサービスの全店網羅を目指し整備を進めている企業がいくつも出てきている。

 公衆無線LANのアクセスポイントの多くは、無線方式にIEEE 802.11b/gを採用している。理論上の最大通信速度は54Mbps、実効速度でも10M~20Mbpsといった水準に達する。3G網の場合、混雑時の実効速度は1Mbpsを切ることも多く、速度の差は歴然としている。朝夕の通勤・通学ラッシュの時間帯、ほかのユーザーがイライラしながら3G回線を使っているかたわら、公衆無線LANを使うことで、高速のネット接続を楽しめる。