渡辺 勝弘、園田 道夫、有限会社タプレ

 ワンクリック詐欺が世間で知られるようになり、ネット詐欺師も新しい手口を考えてきました。それが「ツークリック詐欺」です。電子消費者契約法などの施行により、ウェブサイトで契約を行うとき、「わかりやすい確認画面」を表示する必要があります。この法律を悪用するのです。

 出会い系サイトやアダルトサイトで、その入り口となる「入場」などをクリックしたり、表示されている写真をクリックすると、入会の確認や利用料金を確認する小さな画面が表示されることがあります(下図)。

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 前回、解説したワンクリック詐欺は、その言葉のとおり、1回クリックするといきなり登録料金や利用料金などの請求画面が表示されるものです。ツークリック詐欺は、このように料金請求画面を表示する前に、簡単な確認画面を表示してワンクッションおくのです。

 ここで「はい」ボタンを押す、すなわち2回目のクリックをすると、「あなたのデータを取得中」などと表示され、しばらくして「入会ありがとうございました」「ご登録ありがとうございました」などのお礼の言葉とともに、料金の請求画面が表示されます(下図)。この画面には、詐欺サイトによって自動的に作られた「お客様ID」とともに、利用者が契約しているプロバイダーやIPアドレス[注1]なども表示されます。

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 「あなたのデータを取得中」という画面に続いて、プロバイダーなどの利用者に関する情報を表示することで、あたかも利用者の個人情報が業者の元に送られているかのように錯覚させて、利用者に不安感を持たせるのが目的です。詐欺サイトによっては、「あなたのデータを取得中」などと表示されずに、すぐに請求画面が表示されることもあります。こうした手口は、ワンクリック詐欺でも行われています。

 ツークリック詐欺には、このように簡単な確認画面を入れたものだけではなく、法律の隙間を縫ってゆくように、巧妙に構成されたものも存在します。ワンクリック詐欺や単純なツークリック詐欺は無視していればよいのですが、巧妙に作られたツークリック詐欺の場合は、結果的に支払わざるを得なくなる可能性があるので注意が必要です。

 さきほど紹介した例のように、請求画面を表示する前に、単に確認画面を表示して2度クリックさせ、利用料金を請求するような詐欺サイトなら、この請求は無視しても構いません。おそらく、ツークリック詐欺を行う側で、電子消費者契約法を誤解しているのでしょう。

 ところが電子消費者契約法を研究して構成されたツークリック詐欺のサイトは注意が必要です。電子消費者契約法では、実際に申し込みボタンを押す前に、分かりやすい契約内容の確認画面を表示するなどの処置を取るよう、事業者に指示しています。このようなサイトで申し込んでしまった場合、使ってもいないのに入会金や利用料金を請求するような詐欺サイトだったとしても、契約が成立してしまうことが無いとは言い切れません。

 利用規約をきちんと読み、どういった場合に契約が成立するのかを確認し、不用意にクリックして契約してしまわないように気を付けましょう。利用規約が分かりづらいときは、そのサイトを利用しないようにしましょう。

[注1]IPアドレス インターネットに接続しているパソコンなどを識別するための番号。IPアドレスはすべて異なる番号が使われる。

  利用規約は必ず読むべし

イラスト:きよすけ、笹野 喜嗣