渡辺 勝弘、園田 道夫、有限会社タプレ

 「完全無料」などとお得感を出したり、「お久しぶり」「覚えてますか」など親近感を感じさせる件名のメールが<届くことがあります。これらの多くは、メールを開かせ、本文中のURLをクリックさせて料金を請求するワンクリック詐欺です。携帯電話で多く見られます。

 川村さん(仮名)は、都内の商社に勤務する営業マンです。三十歳も半ばを過ぎたのに、結婚どころか彼女もいません。少し焦りを感じ始めている彼の携帯電話に、ある日突然、「みか」という件名のメールが届きました。この名前の女性に心当たりはありませんが、間違いメールだろうと思いつつ「なんのメールだろう」という好奇心からメールを開いてみました。

 メールの内容は下図右のようなものでした。本文にはURLがあり、好奇心でクリックしてみると出会い系と呼ばれる携帯サイトでした。「へー。女の子と知り合えるのか」。何気なく「入り口」のボタンを押した彼の目に、いきなり自分の現在いる場所と個体識別番号、そして利用料金「2万4000円」の請求画面が飛び込んできました。(下図左)

 「なんだこれ?」彼には何が起きたのかわかりません。画面をスクロールすると支払期限が3日以内であることと、振込先の銀行名、口座番号が書いてあります。しかもこんな警告まであります。「支払期限が過ぎても入金が確認できない場合は、携帯電話会社に個人情報の開示を請求し、直接お伺いしたうえで集金させていただきます。なお、その場合は利用料金に加えて延滞手数料が別途加算されます」

 「なにか間違えて選んだかな。とにかくお金を払わなくちゃ」。彼は混乱したまますぐに銀行に向かい、お金を振り込んでしまいました。

 職場に戻ってから同僚に一部始終を話すと「おまえバカだなぁ。そんなのにだまされたのか」と笑われてしまいました。彼の話では、最近流行の「ワンクリック詐欺」と呼ばれるものだということです。

 やっと事情が理解できましたがもう手遅れです。警察に届けようかと考えましたが、勉強代だと思ってあきらめることにしました。