渡辺 勝弘、園田 道夫、有限会社タプレ

 さまざまな商品やサービスを一般の人に使ってもらいその感想や意見などを集めるモニター。モニター料を貰えるものやいくらかの費用を負担することで終了後に商品が格安で手に入るなど、その特典はさまざまです。しかし、おいしそうな話には危険なワナが潜んでいることがあります。

 吉田さん(仮名)は、自分の携帯電話に送られてきた1通のメールに目が留まりました。

 「携帯電話の受信調査のモニター募集。電話機1台につき、月1万円のモニター料をお支払いいたします」。調査に協力するだけで1万円もらえるならちょっとした小遣い稼ぎになると思い、吉田さんはさっそくこの調査会社に連絡して、もう少し詳しい説明を受けることにしました。

 電話に出たのは物腰の柔らかい男性でした。話し方や声から年配の方のようです。メールで見たことを伝え、もう少し詳しく説明してくれるようにお願いしたところ、丁寧な口調で次のような説明をしてくれました。

 「携帯電話の受信状態を調査をするためには、本体の中に専用のチップを取り付けなければなりません。その作業は手間がかかり、現在多くの応募をいただいていますので、取り付けるためには携帯電話を二ヵ月間ほどお預かりする必要があります。

 ただし、その二カ月間はご迷惑をおかけしてしまうのでモニター料金をお支払いします。またその間、テストのために携帯電話を使用させていただきます。もちろん、そこで発生しました通話料金は、当方でお支払いさせていただきます」。

 携帯電話が二ヵ月間使えないというのにやや抵抗はありましたが、無くては生活できないというほどでもありません。吉田さんは少し考えましたが、思い切ってモニターになることを決めました。さっそく、携帯電話の送り先を聞き、どうせならと思い2台の携帯電話をその業者に送りました。

 それから一カ月半程経ったころ、モニター料金をあてにして銀行口座を確認してみました。ところが約束の2万円が振り込まれていません。少し不安に思いましたが、この時はそのうち振り込まれるだろうと自分を納得させていました。

 さらに十日ほど経過したとき、携帯電話会社から請求書が届きました。料金は調査会社が払ってくれるはずなので、あまり気にすることなく請求書を見てみました。すると、そこには信じられない数字が並んでいました。なんと100万円を越える金額が記載されていたのです。すぐに調査会社に連絡しましたが、いくら電話をしても全くつながりません。この時になって初めて「もしかしてだまされたのでは?」という考えが頭をよぎりました。

 その後も全く連絡が取れず、結局吉田さんは、警察に被害届を出すことにしました。担当の警察官から「おそらくオレオレ詐欺や架空請求などに利用されたのだろう」との説明を受けました。調査会社に渡した携帯電話は、すぐに利用停止の手続きをしました。しかし、100万円を越えた通話料金がすぐに免除されるというわけではありません。料金の支払いについては、現在でも携帯電話会社と協議中です。ちょっとした小遣い稼ぎのはずが、とんでもない結末になってしまいました。

 そもそも、携帯電話を長期間渡すというところで疑いを持つべきでした。モニターに応募するのであれば、その調査会社の所在地やこれまでの実績、今回の調査の発注元などについて確認するようにしましょう。

  応募前に調査会社を確認せよ

イラスト:きよすけ、笹野 喜嗣