苦労して作ったオフィス文書、決定的瞬間をとらえたデジカメ画像─。このような、なくしてしまったら二度と取り戻せないファイルを、いったん保存したままで安心してはいないだろうか。実はそこに、大きな危険が潜んでいる。ファイルを保存した先のハードウエアが、壊れてしまう可能性があるからだ(図1)。そうなると、大事なファイルを取り戻すことは、ほぼ不可能になる。
ファイルを保存する先としては、まず第一にハードディスク。データを外に持ち出すときは、USBメモリー。データを他人に配布したり、大事なデータを長期間保存するにはDVD-R。こうした記録メディアを使うことがほとんどだろう。
仕組み上、寿命は宿命、いつ壊れてもおかしくない
どんな記録メディアにも、必ず寿命がある。いつかは中のデータを読み出せなくなる。
まずUSBメモリーは消耗品だと考えよう(図2)。大事なファイルをUSBメモリーに入れたまま、長期間保管するのはとても危険。放っておくと、保存したファイルがきれいさっぱりなくなる心配さえある。USBメモリーは、パソコンのメインメモリーと違って、内部に電子を蓄えておける。だから、電源がなくてもデータを消さずに保存できる。しかし、頻繁に使うと劣化が進み、電子を蓄えられなくなってしまう。そうなると、保存したデータが消えてなくなる。これがUSBメモリーの寿命だ。USBメモリーはあくまで、ファイルを持ち運ぶための道具だと割り切ろう。
30年持つといわれるDVD-Rでも、保管方法を間違うと寿命を縮める心配がある(図3)。DVD-Rは、何より太陽光に弱い。太陽光を当て続けると、データを記録した部分が変質し、やがて読めなくなってしまう。熱もDVD-Rには大敵。暑いばかりでなく、寒いのも寿命にはよくない。表面に傷が付いたり、指紋や汚れが付いても、データは読めなくなる。保管の仕方次第で、寿命を長くも、短くもできるのだ。
ハードディスクも消耗品と考えよう(図4)。いつか必ず壊れるものという覚悟が必要だ。構造を見てみると、ハードディスクは精密機械そのもの。衝撃にとても弱い。加えて、ネットブックをはじめとするモバイルノートの普及で、パソコンを持ち運ぶ機会が増えている。手荒な扱いは、即故障につながる。ユーザーは手荒に扱ったつもりはなくても、ハードディスクには耐えられない衝撃になっていることもある。ハードディスクは大容量なだけに、故障すると膨大なファイルを失うことになり、被害は大きい。