先日、取材の中で、「顧客に対して心掛けていることは何ですか?」という質問を受けました。その時には、その場で思いついたことをいくつか答えたのですが、改めて考え直し、まとめてみることにしました。

まず、僕らにとっての顧客とは?


 僕らは、WEBサービスの開発を生業にしています。その中を大きく分けると、受託開発と自社サービスの2つになります。したがって、僕らにとっての「顧客」は、受託開発であれば開発依頼をしてくれたクライアント、自社サービスならそのWEBサービスに参加してくれるユーザー、ということになります。

 そこで、それぞれの「顧客」に対して、心掛けていることを、2回に分けて紹介したいと思います。まず今回は、受託開発編です。

あらゆる選択肢をシミュレーションしたという全体像を見せる


 僕が駆け出しの頃、広告業界で大先輩となるWEBディレクターに、質問をしたことがあります。

 「ロゴのデザイン1つで、10万円のものもあれば、500万円のものもある。その違いって何ですかね?」

 返ってきた回答は、「しっかりとしたシミュレーションのもとに考えられた案かどうかの差だな」。

 「例えばそれは、そのロゴがどういうシーンで使われるか?をちゃんとシミュレーションして、あらゆるシーンに対応できるものにしているってことだな」と、補足の解説をしてくれました。

 当時は、その回答に対して、「はぁ。そんなもんですか」という程度の愚鈍な反応しかできなかった僕ですが、この回答の正しさを年々実感するようになりました。(もちろん他にも解はあるでしょうけども・・・)

 確かに、良いものというのは深く考えられている。だから価値が高いということなのだと思います。

 そうはいっても、クライアントには、その深く考えられた過程というのはなかなか見えないものです。それをしっかりと見せることが信頼に繋がります。

 だから、僕はクライアントに、何か提案する時は、他に検討(シミュレーション)した案はどれで、どういうメリット、デメリットがあって、でなぜそれを提案するのか?というように、なるべく全体像を見せることを心がけるようにしています。

 まず、これが1つ目です。

 そして、2つ目に心がけていること。

最初に、僕がカヤックの社員だという立場を捨てる。


 これはどういうことかというと、まず僕がカヤックという会社の人間であることを忘れて、クライアントの立場になって「最適な解は何なのか?」と考えて、話を聞くということです。

 今は「WEB制作会社」といっても、かなり細分化されていますし、得意不得意が会社ごとにあります。我々は作る側の方にいるのでそれを判っています。でも、頼む方にそれはわかりづらいのです。WEBサイトを作るという意味で、十把一絡げにしていたり、あるいは、自分達のやりたいことはわかっているのだけど、それを実現するにあたって、そもそもどういうところに頼んだらいいかわからない。そういうケースが多い。

 そんな時に、クライアントの立場になって、そのWEBサイト開発の目的やターゲットや、あるいは現状の抱えている問題、そのクライアント様のリソースやスキルそんなものを考慮して、そもそもどういう開発会社に頼むべきなのか、予算はどの程度でやるべきなのか、そういったことを自分の立場抜きにして、相手の立場でまっさらな状態で考えます。

 その結果、うちではなく別の会社に頼んだ方が良さそうな時は、その旨を伝えて紹介したり、あるいは、こういう会社に頼んだ方が良いとアドバイスします。そして、そのように公平な見方をした上で、我々がふさわしいと思った時にのみ、手を挙げます。

それが双方にとっていい仕事になる秘訣だと思うからです。