こんにちは。青木恵美です。コラムでははじめまして。「便利なユーティリティソフト」連載もよろしく。

 よく「ライターになるにはどうしたらいい?」「本ってどうすれば出せる?」みたいな質問を受ける。でも、はっきりとは答えられず、口ごもってしまう。というのは、本を出したり文章を書くようになったきっかけは、非常に特殊だから。

 幼少の頃から本が好きで、本を友に育った私は、おぼろげながら本に関わる仕事につきたい、と思っていた。で、念願の出版社に入るも、多忙ゆえか体調を崩して退社。その後さまざまな職業を経ながらも、本への思いは捨てられず、機会をうかがっていた。

 そのような折、パソコンで本を作れる、という話を聞く。ずいぶん前、80年代後半から90年代前半ぐらいの話だ。Apple社のパソコン Macintosh(愛称「Mac」。今でも健在なのはご存じだと思う。Apple社はiPodでも有名)があれば、好きなように本が作れる…と。

 それまでの本作りは、おおまかにいうと、文字は著者から来た手書きの原稿を赤入れして写植屋さんに打ってもらい、写真はトレーシングペーパー(トレペ)をかけて対角線をひいてトリミングと倍率を指示し、プロセス屋さんが写真を処理。その間に字数を数えて行詰め指示や写真の位置などの指示をレイアウト用紙に書いて印刷所に出す。印刷所の職人さんが、写植や写真を指示通りに貼り込んで「版下」を作り、その版下から刷版を起こして印刷する、というかなり多くの人数がかかわる面倒な作業だった。

 ちなみに、これは昔の話。今の印刷業界、ほとんどパソコンを使っての作業に変わっている(紙系のデザインやレイアウトは、今でもMacが中心だ)。そうそう、写植が普及する前は、文字は活版で、ひとつひとつ活字を拾うという、またそれはとんでもなく手間のかかる作業だった。だからこそ、本は大切に扱われてきたのかもしれない。