ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)最大手のミクシィ(mixi)で、ちょっとした騒動が起こっています。同社が2008年3月3日に発表した利用規約の改定(施行は4月1日付)について、ユーザーがミクシィのサーバー上に書き込んだ日記などを、ミクシィが自由に二次利用できてしまうのではという懸念が出ているのです。声を大にして反対を唱えるユーザーは少なくありません。

 具体的には、利用規約の18条1項に次のような記述があります。「本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします」。また18条2項には「ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします」と書かれています。付則の2項では「本利用規約の施行前にユーザーによって行われた行為についても本利用規約が適用されます」とあり、これを問題視するユーザーもいるようです。

 規約改定の発表後、間もなく起こった反対の声に押される格好で、ミクシィは条文の修正を検討する旨を発表しました。ユーザーが著作権を持つことを明記するなどを検討しているようですが、記事執筆時点(3月11日)では、具体的な修正内容を明らかにしていません。

 この騒動を見て私が感じたのは、言わば「一億総権利者」とでも言うべき時代の到来と、それに伴う著作権法の見直しの必要性です。

 くしくもこの騒動の少し前、2月29日に行われたセミナー「著作権リフォーム」において、知的財産権法の権威である東京大学教授の中山信弘氏の講演がありました。その中で中山氏は、近年の著作権をめぐる大きな変化として、「個人が著作権の枠組みの中に登場したことは画期的。個人が著作物の受け手であり創作者であり発信者である、という時代になった」と語りました。

 ミクシィの騒動を目の当たりにしたのが、偶然にも中山氏の話を聞いた直後だったことで、個人が単に創作・発信するだけでなく、著作権の積極的な行使に意識を向け始めたことに、時代の変化を感じた次第です。

 今回のような騒動は初めてではなく、過去にもブログや掲示板の運営会社とユーザーとの間で同様の騒動が起こったこともありました。ただ、著作権法をめぐる状況は、ここ1~2年で大きく変化しており、その中で今回の騒動が起きたことに大きな意味があると私は考えています。