最近ニュースで報道されたように、韓国でトラッキングクッキーをウイルスと認識するようにした偽の対策ソフトを2005年から622万台のパソコンに配布し、ウイルス検出を名目に約126万人から約92億5000万ウォンを騙し取った韓国のセキュリティベンダーの前代表らを検挙した(関連ニュース:「偽ソフト」で10億円を稼いだ人物、韓国で起訴される)。

 実は、この126万人に及ぶ被害者のうちの一人が筆者である。

 このソフトの名前は「ドクターウィルス」。筆者がこのソフトを使うようになったきっかけは、2007年1月に情報通信部が選定した優秀ソフトウエアに選ばれたからである。つまり国がお墨付きを与えた対策ソフトだったわけだ。自国の恥をさらすようでまことに恥ずかしいことだが、韓国のIT政策を指揮する省庁が偽ソフトを優秀な製品と選定するなんて、一体どういう審議をしていたのだろうか。2008年に情報通信部は解体されたので二度とこのようなことは起こらないとは思うが、情報通信部が見破けないほど高度な技術を使った偽ソフトでもなかったので、疑問は大きくなるばかりだ。

 情報通信部はウイルスやスパイウエアを最もよく検出・駆除するソフトとして「ADスパイダー」「PCクリアー」「スパイドクター」、「スパイゼロ」「ドクターウィルス」――の5種類が優秀であるという内容の報道資料を配り、それを省庁のWebサイトにも掲示していた。

 国がお墨付きを与えたソフトなので、筆者も何の疑いもなしにその中の一つだった「ドクターウィルス」をダウンロードしてウイルスをチェックしてみたところ、出るわ出るわ。筆者のパソコンはウイルスとスパイウエアだらけだという結果が表示された上に、「今すぐウイルスを駆除するためには、1回800ウォン、もしくは月額3850ウォンの有料サービスを利用しろ」という案内が出た。

 800ウォンというと日本円で100円。今まで何の問題もなく利用できたのにおかしいな~と思いつつも、大事な商売道具であるパソコンのためなら100円ぐらい使ってやろうじゃないかと、携帯電話の料金に合算請求される小額決済で支払った。

 しかし、1回800ウォンのタイプを選んで決済したはずが、なぜか4000ウォン近い料金が毎月勝手に引き落されていく。携帯電話料金と合算請求なので払わないわけにもいかない。キャリアに連絡をしても、決済代行をしているだけなので請求を止めることはできないという。ドクターウィルスの顧客センターと書いてある電話番号に電話をしても、いつも通話中なのか誰も電話に出ない。