昨日、ネット上で知り合った御仁から、よいお話をゲットしました。掲載の許可を得ましたので、掲載させてください。



 「縁を生かす」

 その先生が5年生の担任になったとき、一人、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。 中間記録に先生はその少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。

 あるとき、少年の1年生からの記録が目に留まった。
「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」とある。

 間違いだ。ほかの子に違いない。先生はそう思った。

 2年生になると、
「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」
 と書かれていた。

 3年生では
「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りする」

 3年生の後半の記録には
「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」
 とあり、4年生になると
「父親は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力をふるう」

 先生の胸に激しい痛みが走った。

 ダメと決めつけていた子が突然、深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前に立ち現れてきたのだ。

 先生にとって目を開かれた瞬間であった。

 放課後先生は少年に声をかけた。
「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?わからないところは教えてあげるから」

 少年は初めて笑顔を見せた。
 それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。

 授業で少年が初めて手を上げた時、先生に大きな喜びが沸き起こった。

 少年は自信を持ち始めていた。