上級編の最終回では、作成した表の“メンテナンス性”について考えてみましょう。表は「作成して印刷したら終わり」というものではありません。何度も繰り返し閲覧したり、値を変えて再利用したりと、後々まで使い回すのが普通です。そこで、表に埋め込む関数式についても、後から式を確認したり、手直しすることを想定して、メンテナンスしやすい形にまとめておく必要があります。

 例えば、次のような式があります(図1)。VLOOKUP関数が使われているのはわかりますが、はたしてこの式が「何をしているのか」が理解できますでしょうか。

図1 例えばこのようなVLOOKUP関数の式がある。VLOOKUP関数を知っていれば、表を検索する式だということは想像できるが、いったい何をする式なのかはまったくわからない

 わからなくても気を落とさないでください。この式は、式を見ただけではどんな目的で使われているのかがわからない式の例です。実はこの式、図2のような表で使われていました。

図2 VLOOKUP関数で左側の商品リストを検索し、F2セルに入力した「商品番号」に該当する「商品名」を自動表示する。図1の式は、商品名を検索するための式だったのだ

 シート全体を見れば、F3セルの計算式が、「商品リストから商品番号を検索して商品名を調べている」とわかります。しかしそれは、表全体の作りやデザイン、表に入力されているデータと「=VLOOKUP(F2,A3:C6,2,FALSE)」という式を総合的に判断して、初めて理解できます。このように単純な表ならまだよいですが、さらに複雑な表に、たくさんの計算式が埋め込まれている場合には、それぞれの式が「何をしているのか」は式を見ただけでは判断しにくくなります。

 そこで、後から式を確認したり、修正したりするときのことを考えれば、「関数式を見ただけで、その式の目的が理解できる」というのが理想です。例えば、次の式を見てください。

図3 VLOOKUP関数の引数に、「商品番号」「商品リスト」「商品名」「完全一致」などと日本語が指定されている。VLOOKUP関数の使い方を知る人なら、何をする式なのか一目でわかるはずだ

 VLOOKUP関数の働きを知っていれば、この式が「商品番号」を「商品リスト」内で検索し、「商品名」を取り出していることがすぐ理解できるのではないでしょうか。実はエクセルでは、通常は「F2」「A3:C6」のように指定するセルの番地(アドレス)に、「商品番号」や「商品リスト」といった任意の「名前」を付けることができます。名前には日本語も使えるため、商品名の入力欄に「商品名」、商品リストの範囲に「商品リスト」などとわかりやすい名前を付けることが可能です。すると、この名前を使って式の参照先を指定できるようになり、式がどのセルや範囲を参照しているのかが一目瞭然です。式の可読性が大幅に向上し、「何をしているのか」が明確となるわけです。

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