米YouTubeと双璧をなす動画投稿サイト大手のニコニコ動画。動画上にユーザーがコメントを書き込んで、テレビ番組のテロップのように表示させられるという機能が特徴だ。サービスを始めたのは2006年12月とごく最近だが、11月13日に登録ユーザー数が400万人を突破するなど、急速に成長してきた。半面、YouTubeと同様に、テレビ番組やゲーム、DVDなどから権利者に無断で複製された映像ソフトが大量にアップロードされている。こうした違法動画を無料で見られることが、急成長の一つの要因だったことも事実。権利者側は多数の違法動画の存在に強く反発。ユーザーも、動画投稿サイトに可能性は感じつつグレーな印象を覚える一因となっていた。

 この構図に変化の兆しが見えてきた。ニコニコ動画が“違法動画の温床”という汚名の返上に動き始めたのだ。10月30日、日本音楽著作権協会(JASRAC)との間で音楽著作物の二次利用に関する包括許諾に向けた協議を始めたと発表。併せて、エイベックスグループや吉本興業などの権利者から公式動画の提供を受け、ニコニコ動画上で配信することを表明した。

 ニコニコ動画を運営するニワンゴの副社長である杉本誠司氏は、「これまでも複数の違法動画対策に取り組むなどの努力を続けてきた。ただし、その努力が見えやすいか見えにくいかという点で課題はあった。JASRACが公表したガイドラインに沿って改善していく」と背景を語る。

 ニコニコ動画が掲げる違法動画対策は右表の通り。このうち、既に実施済みなのが(1)~(3)の3項目だ。違法動画がアップロードされていることを権利者が発見した場合、速やかに削除できるよう、ニコニコ動画上に削除依頼フォームを設置。併せて、権利者自ら違法動画を迅速に削除できるよう、専用の削除ツールを権利者へ配布している。ニワンゴ社内でも動画の監視体制を整え、「アダルト動画のように、当社が当社の指針に基づいて不適切と判断できる動画は、積極的に削除している。悪質なユーザーのID剥奪なども行っている」(杉本氏)。

 そして今回、JASRACとの協議開始などを契機として、(4)~(6)の違法動画対策も本格化する。このうち鍵となるのが、(4)の削除ルールの明文化だ。これを実現するには、ニワンゴが権利者を1社ずつ訪ねて回り、それぞれどういう条件下で違法動画を削除するかを明文化する必要がある。実効性を確保するには相当の期間が必要だ。しかし、ニワンゴにとっても権利者にとってもこの手続きを避けては通れない。背景にあるのは、プロバイダー責任制限法の規定だ。

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