日経パソコンに「ブログでプチ“ライター稼業”が流行」という記事があった(2006年7月10日号トレンド欄)。1人数百円の報酬で、大量の個人ブロガーに「紹介記事」を書いてもらう広告手法が広まっており、その斡旋をするサービスが林立し始めたようだ。ブログで紹介しても売れなければ報酬につながらないアフィリエイトに比べ、少額ながら書けば確定報酬がもらえるため人気を集めているという。その結果、実際の商品評価以上に、大量のブログで絶賛される現象が散見されるようになった。ついにネットでも、お金で買われた“サクラブロガー”による組織票が動きはじめたわけだ。

 こうしたサービスが生まれるのは自然の成り行きで、その活用を否定はしないし、止めることもできない。しかし、自らの名誉にかけて信頼に足る情報発信を本懐とするブロガーや、個人発のブログ情報に信認を寄せるネットワーカーにとっては少々迷惑な話でもある。

 そこで“心あるブロガー”が“サクラブロガー”に見間違われないための心得を考えてみた。

1.とにかく実名とプロフィール

 今後は実名でブログを書き、所属企業・団体や職歴などプロフィールもリンク付きで公開しているブロガーの情報が信頼される傾向が強まるだろう。それらが公開されていないと、関係団体もしくはライバル団体の成りすましか、サクラブロガーに見えるかもしれない。

2.体感なくして賞賛なし

 ブログでは自腹で買って気に入った商品、愛用した商品を讃えるのが基本だろう。もしも、報酬確定型プロモーションを通じて知った商品や、モニターとして提供された商品であっても、ちゃんと自分自身が体感して、その感想を正直に書きたい。そして気に入らなければ書かない勇気も必要だ。

3.顔の見える商品を勧めよ

 私も親友の会社の商品を紹介する場合が多いが、人柄も会社の事情もよく分かっていて信頼できるからだ。また、野菜や食器などの日用品は、実際に作っている達人と現場を目にして感動したからこそ、安心して勧めることができる。今後増えるであろうブロガー向け工場見学も積極活用したい。

4.裏事情までオープンソース

 筆者はブログなどで知人や友人の商品、あるいは自社が関係する商品を紹介する際、そのことを明記するようにしている。そうすれば読者が、関係者の商品だからと“減点”したり、逆に信頼できると“加点”したり自由に判断できるからである。要するに正直に書くのが一番。そこで減点されるか加点されるかは日ごろの人望次第である。

5.商品名検索で石橋を叩いて渡れ

 その商品名でキーワード検索すれば、賞賛記事と批判記事の量と質とを読み比べることができる。また、コピー・アンド・ペーストしただけのサクラブログばかりがヒットするかもしれない。そんな場合は、たとえ体感して納得できる商品でも、紹介すればネットワーカーとしての品位を疑われかねない。

6.品物の先にある企業理念を見よ

 最初は愛用する個別商品の紹介であっても、いずれは提供する企業や経営者の理念にも興味が湧くはずだ。経営理念は会社のWebサイトで調べたり、社長ブログで実感できるので、共感できる企業を応援したい。また昨今は、環境方針や社会貢献活動にもその企業の社会性が現れるので注目したい。

7.目先の小遣いより百年後の評価

 少々大げさで現実的ではないが、ブログを書くときに「この記事を100年後の子孫が読んだらどう思うか」と考えることがある。すると自ずと背筋が伸びて、心が改まるからである。そして目先の小遣い稼ぎや10年後のビジネスのことよりも、今、人として何を書くべきかに心がフォーカスするのである。

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 来るべき一億総ブログ時代において、個人ブログは大切な名刺や履歴書代わりになる。即ち、個人としての“信用の証”にもなるのだ。かくも重要な役割を担う個人ブログが、小遣い稼ぎのサクラだと思われては、何とも寂しい限りだと思うのだが、いかがだろうか?