スキャナーの利用方法は、ユーザーによって千差万別。写真を主に取り込んでいる人、新聞や雑誌を電子スクラップしている人、さらには木の葉や虫といった変わったものを取り込んでいる人までいる。アイデア次第で無限に広がるスキャナーの世界。本特集では、そのアイデアのいくつかを紹介していこう。
 
 年々色あせていく若かりしころの記念写真を、きれいにデジタル化してパソコンに保存しておきたい。スキャナーはこのような用途に最適だ。ガラスの原稿台の上に印刷された写真を裏返しに乗せ、ふたを閉じれば準備は完了。パソコンでちょっと操作をすれば、十数秒で色あせた写真が当時の色鮮やかな発色とともにデジタル化される。プリント写真だけでなく、ネガおよびポジフィルムからデジタル化できるスキャナーも多い。

 一度パソコンに取り込んでしまえば、画像の加工や焼き増しは自由自在。画像管理ソフトを使えば、大量の写真もすっきり整理できる。

流行は電子スクラップ

 スキャナーの機能を使えば、新聞や雑誌、配布された書類などをPDFデータとしてパソコンに取り込んで管理する、いわゆる「電子スクラップ」も実現できる。紙のまま書類を管理するのに比べて、PDF管理は何より検索が素早くできる。スキャンした原稿をOCRで文字認識してテキストデータ化し、そのテキストを付加したPDFデータを作っておけば、あとから全文検索も可能になる。

 プリンターと連携すれば、自宅で簡単にカラーコピーもできる。プリンターにスキャナー機能を合体させた「インクジェット複合機」なら、パソコンが動いていなくても、本体のパネル操作で業務用コピー機と同じような感覚でカラーコピーが行える。

 このほかにも、スキャナーの使い道はたくさんある。紙原稿の代わりに、花や落ち葉、布生地などを取り込んでもいいし、ネックレスや果物といった立体物を取り込むことだってできる(CCD搭載機でないと立体物はきれいに取り込めない。)。東京大学名誉教授で作家としても著名な養老孟司氏にいたっては、なんとスキャナーで昆虫を撮影している。

虫好きにはスキャナーの使用を勧めています

 子供のころからのライフワークが昆虫採集と昆虫研究という養老氏。約1年前、知人に虫をスキャナーで撮る方法を教えてもらってから実践し始めたという。「スキャナーの上に虫を置いて取り込むだけ。とにかく簡単なのがいい。カメラで撮影するとライティングなどが難しいが、スキャナーならそのような悩みは一切ない。イギリスの博物館にいる連中に取り込んだ画像を見せたら、『高い機材を使ったんでしょうね』と言われた。家庭用のインクジェット複合機を使っただけなのにね」と、にこやかに笑う養老氏。よくよく考えると、高解像度で細部まで鮮明に撮れるスキャナーは、まさに小さい虫を撮るのにうってつけ。「同じ種類の虫を並べて取り込んで、細部の違いを見比べても面白い」(養老氏)。ほかにも虫スキャンの楽しみ方はいろいろありそうだ。