読者の中には、アメリカSF作家協会とscribd.comの間で起こった騒動を知っている人も多いと思う。協会は、そのサイトに出ていた作品のいくつかを削除するよう要求したのだが、その削除リストには削除を要求すべきではないものも含まれていたのだ。その1つはコリー・ドクトローの作品だった。これを掲示したのはドクトロー自身ではなく、このサイトのユーザーだったが、ドクトローは配信の許可を与えた。

 彼の話はここで述べられ、インターネット上で広まった。ほかにも、同じような内容のものがこのサイトに載っている。

 これらを読み、他のものは何も読まない人にとっては、事態はきわめて明白だ。合法的なWebサイトを威嚇しようという誤った努力をあれこれやったSF作家協会が、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)を行使すると脅迫したのに対し、Web2.0の方向になびいているすべての人々の声援を受けて電子フロンティア財団(EFF)が激しく反駁したという話になる。

編集部注:原文は長いので、この問題の概要を簡単にまとめておく。この話は、ジェリー・パーネルのほとんどすべての作品がwww.scribd.comに掲載されていることを、読者がパーネルに知らせたところから始まった。さっそくそのサイトを見たパーネルは、自分とラリー・ニーヴンの作品が自分たちの許可なく掲載されていることを確認し、SF作家協会に通知した。同協会には海賊版に対応する委員会がある。そのサイトを見た協会は、パーネルとニーヴンばかりか、アイザック・アシモフやロバート・シルヴァーバーグ、ヴァン・ヴォークトなど、名だたるSF作家の作品が多数、無断で掲載されていることを発見したのである。しかし、協会が送った警告のメールには返事がなく、著作権を尊重するようにという要請を何度も無視された協会は、ついにデジタルミレニアム著作権法に基づく処置をとるぞという態度をとったが、そのときに添付した著作物リストに誤りがいくつもあり、その中にはすでにその著者が掲載を認めているものもあった。その誤りの部分のみがインターネットで燃え上がり、ついにはscribd.comの代理人として電子フロンティア財団がSF作家協会にねじ込んできたというわけである。

 私はこのようなSF作家協会の対応には満足しなかったが、彼らを非難することはできない。彼らは電子フロンティア財団の力を目の当たりにしたわけだが、協会を支持しようという会員作家たちの強い感情も見受けられなかった。

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